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「この犬は、竹谷先輩が山で保護をしたので先輩に特に懐いているんです。そのせいか、僕たち一年生には触らせてくれないんです。今は伊賀崎先輩が世話をしているんですけど……」

「虎若、伊賀崎先輩は孫次郎と一緒に図書委員と虫食い文書の修補をしていらっしゃる。わざわざ呼びに行くのは、申し訳ないよ」

 ああそうか、だからか。どうして犬がここ正門で待っているかが分かった。
 この犬も寂しいとかよりも、恐ろしいのだろう。信頼できる飼い主がいなくなりこの門でひたすら主の帰りを待っているのだと。

「あなたは、竹谷先輩という人の帰りを待っているんだね。でも、虎若くんと三次郎くんが言ってたよ、おなかを空かせているだろうって小屋に帰ろう」
 
 犬は、目を開けたもののうるさいとでもいうように、そっぽを向く。
 説得するように、犬のそばにしゃがみこみ手を伸ばし、背をなでてやる。けれど、立とうとする気配がないので抱っこすることにした。

 「よいしょ、結構重いね」
 
 犬は抱き上げられるとは思っていなかったようで腕の中でじたばたしていたが、体に引き寄せ密着させると、観念したのか足で私のことを蹴ってくるのはやめてくれた。が、いまだにウーッと威嚇してくるし、犬の体は強張っている。
 
 そんなに嫌か。

 近くで見れば見るほど犬に見えない、むしろ狼に見える。まぁそんなに違いはないよね多分。
 
「おとなしくなったね。この子はどこに連れてけばいいのかな」
「こっちです」

 小屋の戸を開けると犬はとぼとぼとゆっくり小屋に入っていった。
 よく見ると、この小屋ボロボロだ。これじゃまた逃げちゃうんじゃないんだろうか。
 
「Aさん、すごいです! 僕たちじゃ全然連れてこれなかったのに」
「はは、無理やり連れてきただけだから、ほらまだ私のとこ見て唸ってる。きっと三治郎くんの方が懐いてるよ」

 まだ怒ってる様子の犬を見て、三治郎くんと顔を向き合わせて笑う。
 そこへ、虎若くんともう一人が肉を持ってきた。肉を見た瞬間、唸るのをやめて肉にがっつく犬を見てまた三次郎くんとまた笑った。

 そこへ、また水色の制服を来た子が小走りでやってきた。

「見つかったんだね、よかったぁ。虎若、三治郎その方は?」
「事務員の……えと、上杉Aさんだよ、ここまで連れてきてくれたんだ」
「はじめまして、一年い組の上ノ島一平です、これからよろしくお願いします」

3→←5話-1 生物委員会の段 



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作者名:シャビ | 作成日時:2023年12月27日 23時

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