検索窓
今日:11 hit、昨日:32 hit、合計:238,881 hit

酔いのせいに 土方side ページ48

……白んだ月が、淡い光を放っている。その光は、静かなこの場所を照らしている。虫の鳴く声が、遠のいていく気がした。


何処か気まずい雰囲気が、俺達を包んでいる。何か喋らなければと、俺は酒が回った頭を必死に働かせようとするが、どうにも上手く動いてくれない。


「……ん〜…!!なんか、久しぶりにこんなこと誰かに話しましたよ」


と、そんな沈黙を先に破ったのはAのそんな気の抜けた声だった。


「お酒のせいか、なんか喋りすぎちゃいましたよもう」

土「……そうだな、明日二日酔いとか抜かしやがったら切腹だからな」

「とか言って土方さんが動けなくなったらお笑いですけどね」

土「俺はそんな飲んでねーし、二日酔いくれェでヒーヒー言うようなバカでもねぇよ」


「何かの間違いでぶっ倒れればいいのに」「切腹させるぞ」、と、そんないつものような言い合いを繰り広げつつ、Aの顔を横目で窺うと、どうやら通常運転に戻ったようで、少し安心する。


…いつの間にやら、俺の中でちゃんとコイツを『部下』だと認識してしまったらしく、俺は内心苦笑する。


ふと、Aの足に視線を落とすと、そこには白い包帯が今も痛々しく巻かれており、それはまだ暫く安静にしろとのことだ。痛みもあるようで、あまり早く歩くことも出来ない。


……それは、確かにあの時、捕らわれたガキ共と、山崎を、仲間を護った証であり、コイツが俺達の仲間であることの証でもあるように思えた。


「……でも、土方さん、」

土「あ?」


名前を呼ばれ、ソイツの足から目線を再びソイツの顔に向けると。


……Aは俺を真っ直ぐに見据えて、優しく微笑んでいて。


「……ありがとうございました、話聞いてくれて」


少しだけ、楽になりました、と。


……はにかむように、そう言って笑ったA。その面から何故か、目が離せなくなり。



「……っ、!……土方、さん……?」


………俺は無意識に、自身の右手を伸ばしては、Aの頬に触れていた。

指先だけを、撫でるように触れさせて、Aはそれに、驚いたように目を丸くさせていて。それに気づいた瞬間、直ぐ様その手を引っ込めた。触れていた時間は、恐らく数秒のものだった。

……何してんだ、俺は。


土「……悪りィ。……酔ってるらしい。寝る」


俺はそう早口で言って立ち上がり、そそくさとその場から立ち去った。


「…?」


……全て、酔いのせいにしたままで。


部屋に戻った俺は、一人、暗いその場所で、自分の右手を疑うように、見つめてみたのだった。

続編です!!→←簡単に 土方side



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (106 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
268人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 土方十四郎 , 真選組   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ピピコ - マイさん» 天才なんてとんでもないです…!!このシリーズのヒロインは私自身もお気に入りです^^ そう言って頂けて嬉しいです!!ありがとうございます!これからも少しでもお楽しみ頂けると嬉しいです! (2017年7月5日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
マイ(プロフ) - ピピコさん、天才です(^○^) 場面が思い浮かべやすいし、ヒロインさんもカッコいいし!続きも楽しく読ませていただきます(o^^o) (2017年7月4日 12時) (レス) id: ce3b99b0d3 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - ミンティアさん» こちらもまたありがとうございます!ミンティアさんのコメントはとっても励みになってます!どう転んで何処に着地するのか、私も全く分かりませんが、楽しみにしていただけると嬉しいです! (2017年6月19日 19時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
ミンティア - かなり遅れてしまいましたが続編おめでとうございます!他作品と共に此方の方も勝手に応援させて頂きます!どうやって物語が転ぶのか気になります。更新頑張ってください。 (2017年6月19日 17時) (レス) id: bb20e7ebdc (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - ハルさん» わ、わわ…!?ま、まさかあのハルさんからコメントを頂けるとは…!!うわ…!なんか嬉しすぎて手ぇ震えて文字打てない…!!(笑)応援まで頂けるなんて…!ありがとうございます!!私もハルさんのこと応援してます!!! (2017年6月12日 20時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2017年6月3日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。