酔いのせいに 土方side ページ48
……白んだ月が、淡い光を放っている。その光は、静かなこの場所を照らしている。虫の鳴く声が、遠のいていく気がした。
何処か気まずい雰囲気が、俺達を包んでいる。何か喋らなければと、俺は酒が回った頭を必死に働かせようとするが、どうにも上手く動いてくれない。
「……ん〜…!!なんか、久しぶりにこんなこと誰かに話しましたよ」
と、そんな沈黙を先に破ったのはAのそんな気の抜けた声だった。
「お酒のせいか、なんか喋りすぎちゃいましたよもう」
土「……そうだな、明日二日酔いとか抜かしやがったら切腹だからな」
「とか言って土方さんが動けなくなったらお笑いですけどね」
土「俺はそんな飲んでねーし、二日酔いくれェでヒーヒー言うようなバカでもねぇよ」
「何かの間違いでぶっ倒れればいいのに」「切腹させるぞ」、と、そんないつものような言い合いを繰り広げつつ、Aの顔を横目で窺うと、どうやら通常運転に戻ったようで、少し安心する。
…いつの間にやら、俺の中でちゃんとコイツを『部下』だと認識してしまったらしく、俺は内心苦笑する。
ふと、Aの足に視線を落とすと、そこには白い包帯が今も痛々しく巻かれており、それはまだ暫く安静にしろとのことだ。痛みもあるようで、あまり早く歩くことも出来ない。
……それは、確かにあの時、捕らわれたガキ共と、山崎を、仲間を護った証であり、コイツが俺達の仲間であることの証でもあるように思えた。
「……でも、土方さん、」
土「あ?」
名前を呼ばれ、ソイツの足から目線を再びソイツの顔に向けると。
……Aは俺を真っ直ぐに見据えて、優しく微笑んでいて。
「……ありがとうございました、話聞いてくれて」
少しだけ、楽になりました、と。
……はにかむように、そう言って笑ったA。その面から何故か、目が離せなくなり。
「……っ、!……土方、さん……?」
………俺は無意識に、自身の右手を伸ばしては、Aの頬に触れていた。
指先だけを、撫でるように触れさせて、Aはそれに、驚いたように目を丸くさせていて。それに気づいた瞬間、直ぐ様その手を引っ込めた。触れていた時間は、恐らく数秒のものだった。
……何してんだ、俺は。
土「……悪りィ。……酔ってるらしい。寝る」
俺はそう早口で言って立ち上がり、そそくさとその場から立ち去った。
「…?」
……全て、酔いのせいにしたままで。
部屋に戻った俺は、一人、暗いその場所で、自分の右手を疑うように、見つめてみたのだった。
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ピピコ - マイさん» 天才なんてとんでもないです…!!このシリーズのヒロインは私自身もお気に入りです^^ そう言って頂けて嬉しいです!!ありがとうございます!これからも少しでもお楽しみ頂けると嬉しいです! (2017年7月5日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
マイ(プロフ) - ピピコさん、天才です(^○^) 場面が思い浮かべやすいし、ヒロインさんもカッコいいし!続きも楽しく読ませていただきます(o^^o) (2017年7月4日 12時) (レス) id: ce3b99b0d3 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - ミンティアさん» こちらもまたありがとうございます!ミンティアさんのコメントはとっても励みになってます!どう転んで何処に着地するのか、私も全く分かりませんが、楽しみにしていただけると嬉しいです! (2017年6月19日 19時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
ミンティア - かなり遅れてしまいましたが続編おめでとうございます!他作品と共に此方の方も勝手に応援させて頂きます!どうやって物語が転ぶのか気になります。更新頑張ってください。 (2017年6月19日 17時) (レス) id: bb20e7ebdc (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - ハルさん» わ、わわ…!?ま、まさかあのハルさんからコメントを頂けるとは…!!うわ…!なんか嬉しすぎて手ぇ震えて文字打てない…!!(笑)応援まで頂けるなんて…!ありがとうございます!!私もハルさんのこと応援してます!!! (2017年6月12日 20時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年6月3日 21時