一応だから 土方side ページ46
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…夏が近い今日この頃。夜もだんだんと蒸し暑くなってきたようで。外は虫の鳴く音がどこからともなく聞こえてくる。耳を撫でるようなそんな音が心地いい。調度いい温度の夜風が髪をなびかせた。
俺はあれから、自室に戻るついでにAの奴が廊下で寝転んでいたりしねぇか見回ることにしたため、大広間から足を運んだ。
……いやいや、一応だぞ?ついでだぞ?それに廊下で寝てたりして、風邪でも引かれたら面倒だしいい迷惑だ。そこを踏まえてのアレだからな?他意はねぇ、断じて。
……俺は一体誰に弁解しているんだろうか。
そんな自分に呆れて溜め息をついていれば。
土「…!」
いた。俺の視界には縁側に腰かけるAの姿があった。自分の部屋の前の縁側で、いつものように月を見上げている。なんだよ、要らぬ心配だったらしい。
………いや、心配なんざしちゃいねぇが。
寝巻きの着流しを身に纏い、いつも一つに纏めている長い髪を下ろして風に揺らしている。その姿はやはり何処か新鮮だった。そして、今日も変わらず、月を見上げては悲しげな表情を浮かべている。
土「…」
いつもなら、気にはなるが声はかけなかった。が、今日は酒が入っているからか、不思議と自然にソイツの方へと足が向かう。
土「何してんだ、んなとこで」
「…土方さん」
そう声をかければ、Aは俺を見上げた。交わった目は先程の切なげな色とは違い、いつも通りだった。
「まだ起きてたんですね。皆寝ちゃったのに」
土「俺は大袈裟に飲んでねぇからな」
「今日くらいハメ外せばいいのに」
土「明日も仕事だろうが」
「真面目かよ」
どさくさに紛れてタメ口のソイツに睨みを効かせてやれば、「すみませ〜ん」と全く反省していない言葉を漏らす。やっぱりほっとくんだった。
そう思いながらも、俺はAの隣へと腰を下ろした。
「…寝ないんですか?」
土「…まだいいだろ。それを言ったらお前もだろうが」
「私はまだ眠くないんですよ」
そう言ってヘラリと笑うソイツ。いつもと髪型が違うからか、別人のように見えてしまう。
土「…お前、たまにここで、そうやって月見てるだろ」
ふと、思ったままに口に出してみれば、「見てたんですか」と。
「覗き見なんて悪趣味ですね、警察のくせに」
土「トッポ女がよく言うぜ」
「今トッポ関係ないですよね」
そんな軽口を叩き合いつつ、Aは不意に目線を自身の手に移す。
そこには、いつもAが髪を結わえる時に使っている赤いリボンが握られていた。
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ピピコ - マイさん» 天才なんてとんでもないです…!!このシリーズのヒロインは私自身もお気に入りです^^ そう言って頂けて嬉しいです!!ありがとうございます!これからも少しでもお楽しみ頂けると嬉しいです! (2017年7月5日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
マイ(プロフ) - ピピコさん、天才です(^○^) 場面が思い浮かべやすいし、ヒロインさんもカッコいいし!続きも楽しく読ませていただきます(o^^o) (2017年7月4日 12時) (レス) id: ce3b99b0d3 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - ミンティアさん» こちらもまたありがとうございます!ミンティアさんのコメントはとっても励みになってます!どう転んで何処に着地するのか、私も全く分かりませんが、楽しみにしていただけると嬉しいです! (2017年6月19日 19時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
ミンティア - かなり遅れてしまいましたが続編おめでとうございます!他作品と共に此方の方も勝手に応援させて頂きます!どうやって物語が転ぶのか気になります。更新頑張ってください。 (2017年6月19日 17時) (レス) id: bb20e7ebdc (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - ハルさん» わ、わわ…!?ま、まさかあのハルさんからコメントを頂けるとは…!!うわ…!なんか嬉しすぎて手ぇ震えて文字打てない…!!(笑)応援まで頂けるなんて…!ありがとうございます!!私もハルさんのこと応援してます!!! (2017年6月12日 20時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年6月3日 21時