【銀魂】己の行く道 貴方の背中【土方十四郎】

いい朝 ページ37

Aside


「…松平公が？」


気持ちのいい朝。……とは言えない朝だった。今日も変わらず沖田くんの犯行と思われるバズーカ音で目を覚ましたのだから無理もない。バズーカ音が目覚ましなんていう朝をいい朝だと言っていいものなのだろうか。私はそうは思わない。

恐らく、というより確実にそのバズーカは土方さんが食らったと見て間違いない。証拠に、バズーカ音の後の怒号を私は耳にしている。それがまた耳障りなのだ。耳栓でも買おうかと今検討している。

まぁ、そういう訳でそんな朝のことだった。私はいつも通りに仕事をするべく土方さんの部屋に足を進めていたのだが、近藤さんに呼ばれ、足を止めていた。

というのも、先程屯所に警察庁長官である松平公が訪れ、私のことを呼んでいるとのこと。松平公とは、私が真選組に入りたての時に挨拶程度に会ったことがあるため認識はある。


「なんだって私を？」


首をかしげながらに私は隣を歩いている近藤さんに問う。認識はあるものの、何かそんなお偉いさんに呼ばれるようなことは犯していない。松平公が待っている客間へと歩きながら「それがなぁ…」と近藤さんは苦笑いを浮かべた。


近「なんでも、Aをスカウトしたいと…」

「スカウトォ？」


訳が分からない。なんだ、アレか？私はアイドルにでもなるのか？なんていう適当で検討違いなことを思い浮かべる。スカウトとは、と、また近藤さんに聞くと「まぁそれは、」と。


近「本人に聞いてくれ」


と、気づけばその客間はもう目の前へと迫りつつあった。警察庁長官がいるというだけあって、襖の前には護衛のような人が二人ほど立っている。まぁとはいえそんなんで怖じ気づくような私じゃないけれど。

…ふと、私は足元を見てみる。私の右足にはまだ痛々しく包帯が巻かれている。この間、ライフルの銃弾を食らった右足。まだ酷く痛むため、私は気を付けながらゆっくりと歩を進めている。それに合わせて近藤さんも歩く速度を落としてくれているようで。


…なんだか申し訳ない反面、少しだけ嬉しくなってしまう。


「ごめんなさい近藤さん。私、歩くの遅くて…」

近「そんなこと気にしなくていい！それはAが仲間を、子供達を護った証なんだからな！」


そう言ってにっこりと笑う近藤さんを見て、私は改めて、ここに来て良かったかもしれないと強く思った。


近藤さんに釣られて私も少しだけ笑った。この人の笑顔は、どうにも周りを明るくする力があるらしい。この人が笑うと、こっちまでそれが移ってしまうような。

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