【WT】小さな恋愛がいっぱい【短編集】

☆体育祭　kn ページ31

今日は体育祭です。

「暑いぃいぃい」

隣の友人が叫んでいます。
私はそんな友の瀕死の声を聞きながら片想いの相手を探します。

「ほらいたよ！そこに！」

指を差す彼女の先を見てみれば、クラスの人気者のきんときくんが…！

『相変わらず人気者だね…』

同じクラスの女子からの黄色い悲鳴に似つかぬ声援が、彼には浴びせられる。
ちょっと気の毒…かなw

私が彼を見つめていると、きんときくんと偶然目が合った。
彼は大きく手を振っていた。

私に…してくれた？
いやそんなわけないか。

私の代わりに他の女子が声援を送ります。
女子って…怖いねw

「体育祭の時のきんときくんは、この学校のヒーローみたいだね」

ぽつりと友達が言った。

『まぁ私たちには関係ないけどね〜』

きんときくんはクラス1の運動神経の持ち主。
いつも明るく誰にでも話しかけてくれる。
あまり人と話さない私にさえ、平等に話しかけてくれた。
そんな彼のことをいつしか好きになってしまった。
まぁ、告白なんてそんなことしませんよ、無理なんでw

パンッというピストルの音で走者が一斉に飛び出すのを私たちは見つめる。
うちのクラスカラーの青色のTシャツは…現在2番手だ。

きんときくんはアンカー…頑張って…！

アンカーの彼にバトンが渡った途端、1番と2番の差が徐々に縮まる。

「きんときくーん！頑張れー！」

接戦なので他クラスの声援も混ざり合う。

『きんときくん、頑張って…！』

気付いたら私も声に出して応援していた。
周りの声にきっとかき消されていたとは思うけど…
別に聞こえなくてもいいもん。
こういうのは気持ちが大事だから。

ビデオ判定まで行った結果、勝ったのは私たちのクラスだった。
みんな大喜びしてるなぁ…

私はそんなハイテンションなクラスメイトの横を通り、冷水機へ向かう。

kn「Aちゃん、お疲れ様〜」

まさかこんなところで会うなんて。

『きんときくん…リレーお疲れ様！それと…1位おめでとう！』

kn「ありがとう。Aが応援してくれたからかな」

無意識の天然ボーイはそう告げる。
不覚にも、ドキッとしてしまう。

『私の声なんて聞こえなかったでしょ？』

kn「でも応援してくれてたじゃん。だから俺、手振ったのに」

『え…』

そ、それって…？

kn「好きな子のためなら、全力で頑張るんで、俺」

彼はいたずらっ子のような笑みを浮かべてそう言った。

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