どうして彼女が ページ10
「殺さないのならば戻りましょう、三島さん。首領に報告に行かなければ……コホッ」
芥川は白衣の方を見もせずに、外套を翻す。
やや不機嫌そうな声色で、白衣の名を吐き捨てた。
三島?
白衣の名前、三島。ありふれた苗字。
だが、偶然と呼ぶには余りにもタイミングが良すぎた。
「芥川、お前、今なんて云った……?」
僕の声で芥川は「貴様には関係ないだろう」と云わんばかりに、煩わしげに振り向いた。確かにそれはただの業務連絡だろうし、本来ならば僕には何の関係もない台詞のはずだ。
けれど実際僕はそれに反応したし、何より……三島と呼ばれた白衣のマフィアはその横で固まっている。
まるで正体を隠すかのように羽織られた大きめの白衣、仮面、変声機。
唐突に、全ての奇妙さに得心がいった。
どうして彼女が其処にいる。
どうしてですか、
「……A、さん」
《あーあ。やっぱバレちゃったかぁ》
狐の仮面を外してこちらに視線を投げたのは──やはり、というべきか──僕の先輩だった。
「久しぶりだね、敦君」
36人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夕野きする | 作者ホームページ:http://http://commu.nosv.org/p/asubook/
作成日時:2019年2月23日 15時