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｢見つかってしまった｣
｢まあ、一回や二回の騒ぎじゃないから。Aさんの脱走癖｣
｢そうだったかなぁ｣
そう、彼女の脱走癖は、今に始まった騒ぎじゃない。過去にも何度か同じようなことがあった。
それも、全部朝方。同じ公園に、同じような時間に来る。
｢毎回聞くけど、何があったん｣
｢何もないよ？｣
｢…ああ、そう。じゃあいいけど｣
｢あれ、今日は問い詰めないんだ｣
｢聞いても答えてくれないの、そろそろわかってきた｣
彼女は相変わらず俺の方はあまり見なかった。この公園に来ると、決まってそうだ。
それに対して物悲しいような感情を抱く日もあったけれど、そもそも彼女があまりにも変わり者だからか最近では最早慣れのほうが前に出てくるようになった。
時の流れとは本当にすごいものだと思う。
仕方がないから俺は、毎回彼女の隣に座ってただ日が昇ってくるのを待つ。
彼女はこうしてこの公園に来たときは、朝が来るままでは帰ると言わないのだ。
どんな意図があるかは知らない。
抱えてきた上着も、かけてやるなんて恥ずかしい真似はできないから、押し付けるように手渡した。
｢ありがとう。優しいね拓朗くんは｣
｢…や、別に｣
｢どういたしましては？｣
｢……どういたしまして｣
少し空気が揺れて、笑っているのがわかった。こうして時々俺をからかうように笑う彼女が好きなんだろうと思い始めたのも少し前で、今ではうまいこと乗せられてあげるのにもある種幸福的な価値を見出している。
｢川上くん、少し私の話を聞いてはくれませんか｣
ふと、彼女が呟いた。
それはいつかの、俺と彼女がまだ、ただの先輩と後輩の関係の時の呼び名で、何だか気持ちが落ち着かない。その話の内容が良いものであれ悪いものであれ、きっとあまり心臓の負担的にはよくないことを言い出すんだろう。
彼女は俺の手渡した上着に袖を通しきると、少し俺を見てからまた、どこかも分からない所へ視線を戻した。
｢いい、ですけど｣
俺も自然と敬語が戻ってきてしまって、胸中で思うはあまりよくない知らせ。
ただ、細められた彼女の瞳には街灯のオレンジが光っていた。
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ぶっく。(プロフ) - どの作品も本当に素敵で、すべての話で心を動かされました！文章がとても綺麗……！最高の7名がそれぞれちがう時間を軸にした物語を展開されていて、本当にそれぞれちがう良さがありました。読んでいてとてもとても楽しかったです！ありがとうございました！ (2020年4月8日 4時) (
レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
餅兎(プロフ) - 神作者の皆様、執筆お疲れ様でした！どれもこれも素敵な作品で、一つ更新される度に胸を躍らせていました。本当に素晴らしい作品を有難う御座いました…！！ (2020年4月8日 0時) (レス) id: 10f5dc34bc (このIDを非表示/違反報告)
還元(プロフ) - いろさん» 読んでいただきありがとうございます。この後もまだまだ素晴らしい作品が続きますので、どうぞ最後までお付き合いください！コメントもありがとうございました！ (2020年4月4日 1時) (レス) id: 0ea79b5d61 (このIDを非表示/違反報告)
はるむにに(プロフ) - 神々の集まりですね、、本当すごいです(語彙力)次のお話も楽しみにしております！ (2020年4月1日 22時) (レス) id: 33dd96b3e7 (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - なんと…凄い神々が集まって作品をお造りになられたのですね、一話目から凄かったです。皆さんの見れるなんて…最高です。ありがとうございます。 (2020年4月1日 20時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：830 x他5人 | 作者ホームページ：
作成日時：2020年3月29日 15時
