泡が割れないうちに【QK】

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私は麻雀が好きだった。
それを生業としてしまう程に。


大学生の頃は麻雀を趣味として、そしてゲームとして遊んでいたが就職を考えた時、好きなことを仕事に出来るならどれだけ良いだろうと思ったことが始まりで雀士への道を選んだ。

大学時代は先輩から紹介してもらったチームでクイズをしたり知識を広める記事を書いたりという活動もしていた。卒業後は正社員にならないか？というお誘いを最高経営責任者の方から頂いていたが、敷かれたレールの上を歩む人生は面白味がないと思ったので辞退させて頂いた。勿論卒業後に就職されているライターさんもいらっしゃるので断じてこれが悪いという訳ではない。
ただ、私は人生経験として参加していた場所へ特に努力もしないで就職させてもらうのは、必死に就職活動をしている同年代の学生に申し訳ないと思ったのだ。


ありがたい事に私の頑張りが認められて麻雀の世界ではプロと呼んでもらえる地位に辿り着いたが、日々何か物足りなさを感じて過ごしている。

"何か"と言ったがその物足りなさの正体は分かっていた。

―――先輩のこと。

私は先輩が好きだった。パズルが得意で、とても暖かく面倒見のいい人で。そして、私を呼ぶ優しい声が、何より好きだった。

卒業を機にQuizKnockを抜ける気でいた私は、あの日、想いを伝えるつもりだった。なのに、先輩を怒らせてしまった。当たり前だ。軌道に乗ってきたQuizKnockの行く末を見届けることなく、自分の夢の為にチームを捨てたのだから。

けれど、応援してくれると思っていた。先輩なら。


昔のことを考えたって仕方ないのは分かっていながらも感傷に浸っていると突然電話の着信音が部屋中に響き渡る。
電話の主はQuizKnockでお世話になっていた同い年の川上くんだった。

［もしもし、久しぶり］
［うん、久しぶり。それよりどうしたの？電話なんて］
［あー、えっと。まず、この前のプロリーグ優勝おめでとう］
［いつもいつもありがとう……応援とか感想とか凄く助かってます］
［あの試合、皆で見てたんだけど久々に会いたいなーって。伊沢さん達が。近いうちオフィス遊びに来ない？］
［……うーん、私が行ってもいいのかなあ］
［何を謙遜してるのか分かんないけど皆会いたがってたよ。Aが抜けてから入った新メンバーも会ってみたいって］
［えぇ…………拒否権なさそうだね］

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