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なかなか決心がつかず、川上くんから電話をもらって一ヶ月ほど経ってしまったがやっとオフィスに訪れることにし、最寄りの駅を降りた先で一番会いたくなくて、でも一番会いたかった人と再会を果たしてしまった。
「…………」
「…………」
「……久しぶり」
「お、お久しぶりです……」
先に沈黙を破って声を出したのは私ではなく、ばつの悪そうな顔で目を一切合わせようとしない先輩だった。
気まずさが私たちの周囲を取り巻く。
私の思い出の中にいる先輩はもっと優しく微笑んでくれていた。それなのに、目の前にいる彼に過去の面影は一切なくて。
そんな表情をするなら私のことを無視して踵を返せば良かったのに。それでも、そうすることなく私と少しでも向き合おうという気があったのだと思うと嬉しくもあった。
「じゃあ、俺はこれで。……その、元気そうで良かっ、」
「ま、待ってください!……あの、オフィスまでの道が分からないんです、けど……案内、して頂けませんか」
我ながら酷い嘘だと思う。
私は昔から地理に強かった。一度通った道は勿論、地図を一度見ただけで目的地まで辿り着くことが出来る特技を持っている。
現在のオフィスは私が以前訪れていた場所から引越しをしたらしく、初めての土地ではあるが予め地図に目を通していた私にかかればなんてことはなかった。
自他共に認める地理の強さは、一番交流の深かった先輩は当たり前であるが関わりのない人々にまで噂が伝わるほどで、そんな先輩を引き留める為の下手くそな嘘に怒ることも見捨てることもなく了承し、オフィスまで案内する為に私の前を歩いてくれる彼は、私の知っている優しい先輩だった。
「Aー!!久しぶり!」
「おわっ、伊沢さん!ご無沙汰してます。元気そうで安心しました」
「てか来んのおせーよ!川上が連絡してから一ヶ月も経ってるじゃねーか!」
「お、落ち着いてください、なんというか…心の準備、みたいなものが必要でして……」
「大袈裟か」
QuizKnockの新旧入り混じったメンバーに迎えられて再び、だけど初めての地に足を踏み入れる。
雀士になったことへの後悔は一ミリたりとも無いがQKへの未練がないかと言うとそうでもなく、記事はしっかり読んでいたしYouTubeチャンネルでの動画もそこそこ見ていたので、一方的に存じ上げている面々相手に緊張することはあまり無かった。
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ぶっく。(プロフ) - どの作品も本当に素敵で、すべての話で心を動かされました!文章がとても綺麗……!最高の7名がそれぞれちがう時間を軸にした物語を展開されていて、本当にそれぞれちがう良さがありました。読んでいてとてもとても楽しかったです!ありがとうございました! (2020年4月8日 4時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
餅兎(プロフ) - 神作者の皆様、執筆お疲れ様でした!どれもこれも素敵な作品で、一つ更新される度に胸を躍らせていました。本当に素晴らしい作品を有難う御座いました…!! (2020年4月8日 0時) (レス) id: 10f5dc34bc (このIDを非表示/違反報告)
還元(プロフ) - いろさん» 読んでいただきありがとうございます。この後もまだまだ素晴らしい作品が続きますので、どうぞ最後までお付き合いください!コメントもありがとうございました! (2020年4月4日 1時) (レス) id: 0ea79b5d61 (このIDを非表示/違反報告)
はるむにに(プロフ) - 神々の集まりですね、、本当すごいです(語彙力)次のお話も楽しみにしております! (2020年4月1日 22時) (レス) id: 33dd96b3e7 (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - なんと…凄い神々が集まって作品をお造りになられたのですね、一話目から凄かったです。皆さんの見れるなんて…最高です。ありがとうございます。 (2020年4月1日 20時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:830 x他5人 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年3月29日 15時