02 ページ19
夢を叶えようと一歩を踏み出すAへ一方的に最低な言葉を投げかけてしまった俺は、大粒の涙を瞳に溜めた彼女のことを見ないふりして、逃げた。それから一切連絡は取っていない。
俺のせいでお別れ会を開くことはおろか、他のメンバーは何も知らないままAは突然消えてしまったので皆心配していたが、彼女は伊沢に「QuizKnockの皆さんへ」と書かれた手紙を渡していたようで、それを読んだ皆は安堵の表情を浮かべていた。
しかしその手紙の内容は謝罪で埋め尽くされており、直感的に俺のせいだと思わずにはいられなかった。なぜなら、俺があの日Aに言ってしまった不満や文句への謝罪ばかりだったから。
QuizKnockを抜けたAはあっという間にプロの雀士になっていて、何度もリーグで優勝を果たし俺の手が届かない場所へ登りつめていた。ネットで見かけたものだから真偽は不明ではあるが、彼女の年収は一千万ほどであるらしい。
俺たちもYouTubeチャンネルの登録者数は百万人を超え、出版した本の売り上げ部数も上々だったが彼女には敵わないレベルである。
「なー、福良さん」
「……ん?」
「アイツにまた遊びに来いよって連絡しようと思ってるんだけどさ、どう思う?」
「どうって……。いいんじゃない」
「そう?なら、福良さん連絡しといてくれる?」
「え?いや、どうして俺が」
「一番仲良かったじゃん!俺らより福良さんから連絡もらえた方がここに来てくれる確率高そう」
俺とAがどんな別れ方をしたか伊沢は知らないからこんな呑気でいられるのだ。とはいえ、話すつもりもないけれど。
どっちにしろ、俺が彼女に連絡を入れるのが一番確率が低いと思われる。
「仲良いって言っても、もう連絡取ってないし。どうせなら伊沢が誘った方が良いと思うけど」
「え、福良さんまだ連絡とってるかと思ってた。俺も手紙受け取って以来Aと話してないしなー」
「皆さん連絡とってなかったんですね。俺は試合前に応援メッセージ送ってますけど……」
「えっじゃあ川上で良くね?」
「…俺で良いんですか。じゃあ、近いうち連絡入れますね」
何とか連絡を入れる人選を俺から逸らせたことに安堵する。同時に川上とは今でも連絡を取っているという事実に胸がチクリと傷んだ。
302人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぶっく。(プロフ) - どの作品も本当に素敵で、すべての話で心を動かされました!文章がとても綺麗……!最高の7名がそれぞれちがう時間を軸にした物語を展開されていて、本当にそれぞれちがう良さがありました。読んでいてとてもとても楽しかったです!ありがとうございました! (2020年4月8日 4時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
餅兎(プロフ) - 神作者の皆様、執筆お疲れ様でした!どれもこれも素敵な作品で、一つ更新される度に胸を躍らせていました。本当に素晴らしい作品を有難う御座いました…!! (2020年4月8日 0時) (レス) id: 10f5dc34bc (このIDを非表示/違反報告)
還元(プロフ) - いろさん» 読んでいただきありがとうございます。この後もまだまだ素晴らしい作品が続きますので、どうぞ最後までお付き合いください!コメントもありがとうございました! (2020年4月4日 1時) (レス) id: 0ea79b5d61 (このIDを非表示/違反報告)
はるむにに(プロフ) - 神々の集まりですね、、本当すごいです(語彙力)次のお話も楽しみにしております! (2020年4月1日 22時) (レス) id: 33dd96b3e7 (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - なんと…凄い神々が集まって作品をお造りになられたのですね、一話目から凄かったです。皆さんの見れるなんて…最高です。ありがとうございます。 (2020年4月1日 20時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:830 x他5人 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年3月29日 15時