昼下がりの感傷/マイナス ページ18
俺は麻雀が嫌いだった。
Aを遠くに連れて行ってしまったから。
もしも、彼女が麻雀を好きではなかったら。もしも、彼女と出会っていなければ。そんなたらればを考えてしまうほどに俺は参っている。
[今年も優勝おめでとうございます!]
[ありがとうございます…!]
テレビに映るのはリポーターの男性と、インタビューに受け答えをしているかつてQuizKnockの一員だったA。
「今年もAちゃんが王者かー!マジですげーわ」
「また前みたいに麻雀したいっすね」
「まぁ俺らのぼろ負けだろうけどな」
麻雀が出来るメンバーの須貝さんと伊沢、川上の三人はオフィスに集まり、プロ麻雀の世界にいるAの活躍をこうして毎回見届けている。
俺はというと、麻雀はよく分からないので遠くに座ってただ傍観しているだけだった。
彼女は俺の後輩で、大学のクイズ研究会で知り合った。クイズの腕前はそこそこだったが、ウェブメディアについて興味があるということで伊沢に声を掛けてQKのライターとして参加してもらうことになったのだ。
リケジョにも関わらず、読みやすい文章や興味を引く表現など多彩な国語力を発揮した彼女が執筆するQKの記事はとても評判が良かった。
YouTubeチャンネルでも彼女の企画は大変面白く、そして解答者になっても笑いを取れるユーモアのセンスも持ち合わせており、メンバーだけでなく視聴者からも好評だった。
しかし、彼女が大学を卒業する頃。
QuizKnockを辞めたいと俺に相談してきた。理由は麻雀のプロ雀士になりたいというものであった。彼女がいかに麻雀を好きか知っていたし、よく伊沢たちと楽しそうに遊んでいたのを見て羨ましいとも思っていた。だから、純粋に応援してあげれば良かったのに。
自分勝手だと思った。記事を書きたいと自ら志願したのに、最後まで続けることなく夢の為に捨てるのか?真面目に仕事をしていると思っていたのに、実は自分の夢を叶える為の踏み台にしていたのではないか?と。
勿論本気で怒っていたわけではない。でも、あの時は突然の事で気が動転していたのだ。
きっと、いや、絶対に嫌だった。AがQKからいなくなってしまうことが。趣味も学部も何もかもが異なる俺達を結ぶものはクイズだけだったのに、彼女がクイズから離れてしまったらもう、何も残らなくなってしまうじゃないか。
その瞬間、糸の切れる音がした。
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ぶっく。(プロフ) - どの作品も本当に素敵で、すべての話で心を動かされました!文章がとても綺麗……!最高の7名がそれぞれちがう時間を軸にした物語を展開されていて、本当にそれぞれちがう良さがありました。読んでいてとてもとても楽しかったです!ありがとうございました! (2020年4月8日 4時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
餅兎(プロフ) - 神作者の皆様、執筆お疲れ様でした!どれもこれも素敵な作品で、一つ更新される度に胸を躍らせていました。本当に素晴らしい作品を有難う御座いました…!! (2020年4月8日 0時) (レス) id: 10f5dc34bc (このIDを非表示/違反報告)
還元(プロフ) - いろさん» 読んでいただきありがとうございます。この後もまだまだ素晴らしい作品が続きますので、どうぞ最後までお付き合いください!コメントもありがとうございました! (2020年4月4日 1時) (レス) id: 0ea79b5d61 (このIDを非表示/違反報告)
はるむにに(プロフ) - 神々の集まりですね、、本当すごいです(語彙力)次のお話も楽しみにしております! (2020年4月1日 22時) (レス) id: 33dd96b3e7 (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - なんと…凄い神々が集まって作品をお造りになられたのですね、一話目から凄かったです。皆さんの見れるなんて…最高です。ありがとうございます。 (2020年4月1日 20時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:830 x他5人 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年3月29日 15時