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だから、彼を信じたい。
彼自身の口から発された言葉を、笑顔を、信じたい。



私は欲張りなので、
どこまででも、貴方との幸せを求めてしまう。


それでも、許して欲しい。
愛故の我儘だから。



『とりあえず、10時のおやつは日課にしませんか?』



毎日10時に絶対とは言わない。
彼を拘束したいわけではない。



「日課?
珍しいこと言うね、そういうの嫌いそうなのに」



1日1回、


2人で会話をしよう。
2人でお茶をしよう。



『嫌いじゃないよ。
お互いに、知らないことがまだまだありすぎるんだって』



今歩み寄った一歩。
彼の仕事の時間を奪ってまで得たこの一時。



「そういうもん?」



無駄になんて、したくない。



『むしろ、よしくんといる時間が増えるんだから、嬉しいに決まっているでしょう?』



そんなこと、今までは言えなかったけど。



"ちゃんと伝えることが大事"って、

在り来りな言葉ではあるけれど、

"自分の気持ちは言葉にしなければ伝わらない"って、

今、この身をもって体感している。




「しょうがないなぁ、いいよ」



少し柔らかくなった彼の笑顔が眩しくて、つい目を細める。



固まっていた私たちの時が、やっと動きだした感覚。
単純ではあるが、胸が躍る。





時計の針は10時10分を指す。



「ちょっとさ、意地を張って話さない期間が長すぎたよね」

『ほんとだよ。
別れの危機だって毎日思ってたんだから。』




こんなに砕けて話すことも
もうできないと思っていた。


「それは大袈裟」


…じゃあ、よしくんは別れようとは思わなかった?

そこまでは、まだ聞けない。


いつか、私にも自信がついて聞ける日が来た時、聞いてもいいかな?




10時のおやつ。

思いつきにしてもやはり幼い言葉だよなぁ。




そんな思いつきで放たれた言葉が、
ここまで意味を持つことになるなんて、
10分前の私には想像できなかった。



だけど、その思いつきに救われて今の私がいる訳で。




午前中は彼を独占できますように、といった、
何とも淡いと思われる夢が、

不意に叶ってしまった、そんな昼前の一時のお話。




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ぶっく。(プロフ) - どの作品も本当に素敵で、すべての話で心を動かされました!文章がとても綺麗……!最高の7名がそれぞれちがう時間を軸にした物語を展開されていて、本当にそれぞれちがう良さがありました。読んでいてとてもとても楽しかったです!ありがとうございました! (2020年4月8日 4時) (レス) id: 19fcfdccc5 (このIDを非表示/違反報告)
餅兎(プロフ) - 神作者の皆様、執筆お疲れ様でした!どれもこれも素敵な作品で、一つ更新される度に胸を躍らせていました。本当に素晴らしい作品を有難う御座いました…!! (2020年4月8日 0時) (レス) id: 10f5dc34bc (このIDを非表示/違反報告)
還元(プロフ) - いろさん» 読んでいただきありがとうございます。この後もまだまだ素晴らしい作品が続きますので、どうぞ最後までお付き合いください!コメントもありがとうございました! (2020年4月4日 1時) (レス) id: 0ea79b5d61 (このIDを非表示/違反報告)
はるむにに(プロフ) - 神々の集まりですね、、本当すごいです(語彙力)次のお話も楽しみにしております! (2020年4月1日 22時) (レス) id: 33dd96b3e7 (このIDを非表示/違反報告)
いろ(プロフ) - なんと…凄い神々が集まって作品をお造りになられたのですね、一話目から凄かったです。皆さんの見れるなんて…最高です。ありがとうございます。 (2020年4月1日 20時) (レス) id: 5fbef9d1c0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:830 x他5人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2020年3月29日 15時

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