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フェリドを提供者に選んだのは特にこれといって意図があった訳ではない。
ただの個人的な興味だ。
日本に来る以前は接点があったと言うには少し難しいくらいで、ウルドの雑務の手伝いで上位始祖会に何度か出入りした際に姿を見た程度。
だが、それのおかげか興味が沸いたことも事実だ。
七位という低位でありながら、唯一上位始祖会に立ち入る事を許される吸血鬼。
上位始祖たちからはあまり評判が良くなかったが、それがどんな男なのか気になって仕方なかった。
「軽い気持ちであいつを選んでいるのだろう」
「そんなこと…ありません」
「ウルド様、ちょっと落ち着きましょうよ。まだ日本に来たばかりじゃないですか。まだ時間はありますし…」
「私はお前を心配してるんだ。また、奴に手を出された時のようにお前が苦しむ様は見たくない」
ルクの静止を聞かないウルドは依然としてその強硬な姿勢を崩さなかった。
いつもは間に入ってくれるルクだが、今回はその役目を果たすかどうか怪しい。
寧ろウルドの様子からして期待をしない方が無難だろう。
心に沸々と沸き立つ怒りを感じる。
「…離して」
「………」
「離してってば!!私はもうあの時とは違う!フェリドが仮に奴と組んでいたとしても私は後悔しない!」
「殺されてもか」
「あれから私はずっとお兄様に従ってきた。ずっと閉じ籠っていた間、世界は変わり、私たちの親が姿を消した。…なのに私はいつも蚊帳の外。どんなに聞いたって何も教えてくれない!」
「………」
「やっと外を歩けるようになったのに、協力者を選ぶ自由も与えられない!私はいつもお兄様から逃れられない!」
もう右も左もわからない子供じゃない。
元々吸血鬼となった頃でさえ、子供と扱われる程の歳でもなかった。
それなのに、ウルドは何千年と経とうが変わらず子供として庇護をしようとする。
人間の血を飲めなくなってからはなおさら酷くなった。
いい加減に逃れたかった。
強く振り払うと、案外簡単に拘束が解かれた。
兄妹二人が睨み合う最中、王の間の扉がすっと開く。
そこに現れたのはこの兄妹間違いなく火種となっている人物であった。
「あれぇ、第二位始祖様も第五位始祖様も予定よりお早い到着ですね。長旅お疲れ様でした」
「図に乗るなフェリド・バートリー」
「………」
「私はお前に会いに来たのではない」
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なな - 更新頑張ってください!フエリドと夢主の甘い関係が好きです。 (2021年12月27日 22時) (レス) @page23 id: 0c7821053f (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとう(プロフ) - shiroさん» コメありがとうございます!力関係が逆なのに振り回されちゃう主人公可愛いですよね…。もともとはフェリドに振り回されてほしいと思って書き始めたお話なのでその点を褒めて頂けて嬉しいです。まだまだ今後もスローペースで続きますがよろしくお願いいたします! (2020年10月24日 21時) (レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
shiro - 夢主ちゃんがフェリドに仕えたり、人間だったりする小説は沢山読みましたが、夢主ちゃんの立場がフェリドより上という設定が今まで見たことないものですごく好きです!立場が上のはずなのにフェリドに流されちゃう夢主ちゃんが可愛いです。更新楽しみにしています! (2020年10月23日 4時) (レス) id: 33dd7ff75e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こんぺいとー | 作成日時:2020年9月18日 13時