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「クルル、お兄様から連絡があったのはいつ?」

「あれ、聞いてなかったの?二日か三日前だけど」

「アイツ………後で顔見たらうっかり殺しちゃいそうだわ。でも、今はそれどころじゃないわね」




真偽を確めるべく、Aが向かったのはクルルが居る王の間。


彼女は悪気なくフェリドに伝言をさせた様子だったが、その選択は大いに間違いだ。


彼はこの上位始祖二人の来訪に何か咬んでいる。
そして、Aは何かにつけて小言が煩い兄に会う気はない。


そうなれば逃げるが勝ちだ。


多忙な彼らが日本に滞在する数日か、数時間だけ身を潜めていれば諦めて帰るはず。


少しだけ退屈かもしれないが小言を逐一くらうよりはマシだろう。
生真面目過ぎる兄に叶わないのだから。




「クルル、私はしばらく消えるから、フェリドをよろしく。フェリドがお兄様に殺されても許容範囲だから」

「……残念だけど、もう手遅れよ」

「あぁ…もう。今度こそフェリドを殺しそう」

「私はそれでもいいけど。面倒事が減るだけだから」




王の間まで誰かがやってくる気配を察知したAは酷く落胆した。


ダメ元でクルルに匿ってくれとも言ってはみたが、勿論彼女は承諾などしてはくれない。


考えてみればここに来るのは大きな間違いだったかも知れない。


フェリドの口から伝えられた後で裏を取ろうなどとクルルのもとへ来たのが間違いだったのだ。


そのまま身を隠せば良かったものを、日本に来訪する彼らが女王への挨拶を省略してAの元に来る筈が無い。


これはまんまと嵌められた。


扉の先から聞こえる靴音は二つ。


一つは重く、もう一つは軽く軽快ささえ感じさせる音。
それだけで誰が居るかなど明白だった。


やがて重い扉が開く。




「よっ、元気にしてたか?お前がつんけんした態度ばっかだからウルド様と一緒に俺も来ちゃったー」

「A」

「………」

「フェリドを選んだ理由に私は納得していない」




クルルの後ろに隠れてももう遅い。


Aには見切れない速さを誇るウルドは簡単に先回りし、腕を掴み上げる。
これで逃亡も儘ならなくなった。


ウルドの赤い瞳が怒気を孕んでいるのは彼との関わりがあまり無いクルルも分かっているのだろう。


彼女は口を挟むことなく静観に徹していた。

14→←14.変態と手を組む



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なな - 更新頑張ってください!フエリドと夢主の甘い関係が好きです。 (2021年12月27日 22時) (レス) @page23 id: 0c7821053f (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとう(プロフ) - shiroさん» コメありがとうございます!力関係が逆なのに振り回されちゃう主人公可愛いですよね…。もともとはフェリドに振り回されてほしいと思って書き始めたお話なのでその点を褒めて頂けて嬉しいです。まだまだ今後もスローペースで続きますがよろしくお願いいたします! (2020年10月24日 21時) (レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
shiro - 夢主ちゃんがフェリドに仕えたり、人間だったりする小説は沢山読みましたが、夢主ちゃんの立場がフェリドより上という設定が今まで見たことないものですごく好きです!立場が上のはずなのにフェリドに流されちゃう夢主ちゃんが可愛いです。更新楽しみにしています! (2020年10月23日 4時) (レス) id: 33dd7ff75e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こんぺいとー | 作成日時:2020年9月18日 13時

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