13 ページ5
さわさわと頬を撫で続ける男を少し見上げると、少し伏せられ熱を持った瞳と視線がかち合った。
「ねぇ、僕の血って美味しい？」
「そうね」
「他の吸血鬼より？」
「まあ…」
認めるのは癪だったが、確かに彼の血は他の吸血鬼よりも味は良く後味がスッキリしていて好きだった。
今さらなぜこんな質問をするのだろう。
「なら他の誰からも血を取らない、僕だけのご主人様で居てよ」
息が顔に触れるほど近くで、フェリドは願いを吐いた。
それはまるで熱に浮かされている子供のようで手を取ってしまいそうになるが、これは永遠を共にしないか、という誘いだ。
吸血鬼として生きる永遠を共に。
そんなことフェリドが相手でなくとも考えたことも無かった。
彼の言い分ではあくまでも主従の関係だろうが、フェリドとAがきちんと主従の関係を保てていたことがあるだろうか。
少なくとも今までは主であるはずのAは振り回されてきた。
さらに近づき、唇に唇を重ねようとしたフェリドを止めた。
彼との口づけは好きだ。
でも、今受け入れてしまえば合意とみなされてもおかしくないだろう。
流石にそれはまずい。
「僕じゃだめかい？」
「私にはそういう事、わからないの」
吸血鬼としては当たり前に彼女が正しかった。
吸血鬼は心も体も死んでいる。新たな何かが生まれることはない。
感情の起伏は穏やかに、何かに心動かされることもなく、ただ人間だった頃の執着心に捕らわれて。
それが吸血鬼の生き方だ。
「僕は君が欲しいよ。例え主従関係だろうが…あぁ、こんなに心動かされて熱くなるのは久しぶりなんだ」
苦しそうに歯の浮くような台詞を吐くフェリドを見て困惑を深めた。
正しい答えがわからない。
頷くも、首をふるも何か違う気がするのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 132人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なな - 更新頑張ってください！フｴリドと夢主の甘い関係が好きです。 (2021年12月27日 22時) (
レス) @page23 id: 0c7821053f (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとう(プロフ) - shiroさん» コメありがとうございます！力関係が逆なのに振り回されちゃう主人公可愛いですよね…。もともとはフェリドに振り回されてほしいと思って書き始めたお話なのでその点を褒めて頂けて嬉しいです。まだまだ今後もスローペースで続きますがよろしくお願いいたします！ (2020年10月24日 21時) (レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
shiro - 夢主ちゃんがフェリドに仕えたり、人間だったりする小説は沢山読みましたが、夢主ちゃんの立場がフェリドより上という設定が今まで見たことないものですごく好きです！立場が上のはずなのにフェリドに流されちゃう夢主ちゃんが可愛いです。更新楽しみにしています！ (2020年10月23日 4時) (レス) id: 33dd7ff75e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こんぺいとー | 作成日時：2020年9月18日 13時
