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開いた扉から顔を覗かせたのはフェリドだった。
彼が来たことでようやく時間稼ぎが終わると、クローリーが胸を撫で下ろしたのは束の間。
フェリドが再び騒ぎを引き起こす。
「Aちゃんのお兄さーん」
「………貴様に兄と呼ばれる覚えはないが?」
能天気にヒラヒラと手を振る彼とは対照に低く唸るような声で威圧するウルド。
Aの存在という免罪符がなければとうにフェリドの体は首と離れてしまっていたことだろう。
逆を言えば、Aの存在を盾にやりたい放題である。
「頑張って説得は試みてるんですけどー…部屋から出たくないそうで、部屋にも入れるなと言われちゃいましたー」
そして、最後に「僕を押し退けて入らないでくださいねー僕が殺されちゃうので」と付け足す。
その一言は端から見れば余計な一言に思えるが、ウルドが自分に手出しできない事実の再確認だ。
これで、フェリドにとっての脅威が消える。
第二位始祖が殺せないなら、第五位始祖もそれに従うしかない。
それが上が絶対な吸血鬼の世界のルールだ。
吸血鬼のことを熟知し、愚かさを理解しているからこその手腕。
多少姑息ながらも、効き目は十分である。
クローリーはそれを目の当たりにして舌を巻いた。
そして、こんなにも彼は大胆不敵で卑怯なのだと再認識した。
全く恐ろしい男である。
フェリドのペースで進む会話に危機感を覚えたらしいルクはついに静観することをやめた。
「お前、会わせる気が無いな」
「会わせる気が無いと言うより、Aちゃんが会いたがって無いんですよー」
「証拠は」
「僕です」
「お前じゃ信用できない」
「彼女の信用は厚くても?」
ルクは口を反射的につぐんだ。
これ以上彼と話せば状況が悪くなると踏んだようだ。
Aがこちらに居るだけで既に彼らにとっては部が悪い。
「ねーウルド様どうしますー?」
「フェリド・バートリー。Aに妙な真似をしたら磔にして日光に晒してやる。覚悟しておけ」
そう言ってウルドは背を向け、優雅にジャケットの裾を揺らして踵返した。
フェリドの口元が緩む。
「次は、お前が焼かれるのを楽しみにしてるからなー」
それを見て、ルクも口元を緩ませ笑うのだった。
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なな - 更新頑張ってください!フエリドと夢主の甘い関係が好きです。 (2021年12月27日 22時) (レス) @page23 id: 0c7821053f (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとう(プロフ) - shiroさん» コメありがとうございます!力関係が逆なのに振り回されちゃう主人公可愛いですよね…。もともとはフェリドに振り回されてほしいと思って書き始めたお話なのでその点を褒めて頂けて嬉しいです。まだまだ今後もスローペースで続きますがよろしくお願いいたします! (2020年10月24日 21時) (レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
shiro - 夢主ちゃんがフェリドに仕えたり、人間だったりする小説は沢山読みましたが、夢主ちゃんの立場がフェリドより上という設定が今まで見たことないものですごく好きです!立場が上のはずなのにフェリドに流されちゃう夢主ちゃんが可愛いです。更新楽しみにしています! (2020年10月23日 4時) (レス) id: 33dd7ff75e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こんぺいとー | 作成日時:2020年9月18日 13時