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おずおずと視線を向けた先には見慣れた赤。


フェリドの手首が傷つき、ジャケットの袖口や上質なフリルさえも真っ赤に染まっていた。
彼はあろうことか長い爪で自身の手首を抉るように傷つけたらしい。


深く傷を負った手首は吸血鬼の再生能力を持ってしても回復には少しかかるようだ。
その間、太い血管から溢れる誘惑の赤が床やソファを穢す。




「君にはたくさん聞きたい事があるからね。大人しく答えてもらえたら体に血を戻してあげるよー」




フェリドはAがゴクリと喉を鳴らした事を見逃さなかった。




「さぁ、答えてAちゃん。じゃないと僕の血が無駄になっちゃうから」




何と姑息な手段であろうか。
血の欠乏した吸血鬼の目に触れる位置に血を置くとは。


酷く全身を痛め付けられたような吸血衝動に襲われるまで、時間があまり無いと焦りが募る。


すぐさま彼を退けたかったが、血が欠乏したこの身体では本来持つ上位始祖と同等の力を振るうことができない。


七位の下位の吸血鬼に嵌められた事実が酷く自身を更に苛つかせる。


未だAの腹部に跨がるようにして、手首からは血を流す吸血鬼を見、目を細めた。


恍惚とした表情でにんまりと笑う彼は殺人鬼さながら。
こんなものを目にしても、あまり感情が働かないのは彼の凶行だからだろうか。
それとも吸血欲で頭が鈍っているからだろうか。


フェリドの策にまんまとはまり、苦痛と屈辱に苛まれるAは兄のように眉間へシワを寄せ、徐に口を開いた。









クローリーたちは部屋の中から漂う濃い血の香りで異変を察知する。


普通の吸血鬼ならば吸血衝動に駆られることの無いはずの香りだが、これを求める吸血鬼がこの部屋の中に一人いる。


特に言い争うような声も聞こえず、いつものように少し過激な喧嘩をしているようでもない。


ただ"食事"をしているだけなら構わないが、こんな香りが漂う最中に上位始祖の彼らが姿を表さないとも限らない。


嫌な予感が的中しないことを願うばかりだが、今はまだ遠くに聞こえる二つの足音がこの後の波乱を予感させる。


こうしてフェリドの計画の一部として矢面に立たされることは少なくないが、今回のものは流石に洒落にならない。


あまり見返りを要求する質ではないが、たまには役目と働きに準じた報酬をフェリドからもらい受けるのも良いかと考え始めた。

16→←16.変態に脅されてます!



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なな - 更新頑張ってください!フエリドと夢主の甘い関係が好きです。 (2021年12月27日 22時) (レス) @page23 id: 0c7821053f (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとう(プロフ) - shiroさん» コメありがとうございます!力関係が逆なのに振り回されちゃう主人公可愛いですよね…。もともとはフェリドに振り回されてほしいと思って書き始めたお話なのでその点を褒めて頂けて嬉しいです。まだまだ今後もスローペースで続きますがよろしくお願いいたします! (2020年10月24日 21時) (レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
shiro - 夢主ちゃんがフェリドに仕えたり、人間だったりする小説は沢山読みましたが、夢主ちゃんの立場がフェリドより上という設定が今まで見たことないものですごく好きです!立場が上のはずなのにフェリドに流されちゃう夢主ちゃんが可愛いです。更新楽しみにしています! (2020年10月23日 4時) (レス) id: 33dd7ff75e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こんぺいとー | 作成日時:2020年9月18日 13時

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