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足音の正体は二人の青年姿をした上位始祖だった。
彼らは端に寄るクローリーたちに目もくれず会話を続けている。
「フェリド・バートリーを処分する。あいつはAの側に置くに相応しくない」
「ウルド様の言い分はわかりますけど、まずはAの説得からですからね。順番間違えると大変なことになるんで…」
「わかっている」
「なら、いいですけどー。俺はフェリドが死のうが別にどうでも良いので」
彼らの会話を聞くに、到着早々に上位始祖の機嫌を損ねた者がいるという噂は本当だったらしい。
その犯人の名を彼らはわざわざクローリーたちの前を通りすぎる際に口にした。
フェリド・バートリーと。
その瞬間、クローリーたちの嫌な予感は見事的中したことになる。
急ぎ、その犯人の屋敷に戻ると、彼はいつものように飄々とした態度でクローリーたちを出迎えた。
その横にはぐったりとしたAが上質なソファへ横たわっているのが見える。
「フェリドくん、今度は上位始祖相手に何しようとしてるんだい」
「僕じゃないよぉ。Aちゃんが、だよ?ねーご主人様」
「うるさい、体揺らさないで」
普段よりも幾分か顔色の悪いAは体を起こす気もないのか、そのままの体勢でフェリドの手をはねのけた。
「吸った分の血を返しなさいよ」
「えーやだよ。Aちゃんがいいって言ったんじゃないか」
「体が動かないわ」
「しおらしいAちゃんも好きだからね。僕がやさしーく手取り足取りお世話してあげるから心配しないで」
「あまり調子に乗ると殺すわよ」
「わー怖い」
フェリドがまともに取り合う気がないと直感したAは顔を背けて黙り込むと瞳を閉じる。
恐らくギリギリ身体が活動できるか否かといった具合にしか体内に血液が残っていないのだろう。
血を飲めばある程度回復はするが、彼女はそれすらも気だるげに拒否するかのように闇に体を委ねている。
多少の誤魔化しはそれで利くだろうがあまり長くは持たない。
「フェリドくん何してるんだい…僕に用事ないなら帰るけど」
「あー待って待って。君たちに手伝ってもらいことがあって!」
「嫌な予感がする」
「やだなぁ、そう言いながらもクローリーくんは二つ返事で受けてくれるって知ってるんだぞ」
やけに深い笑顔を浮かべるフェリドがとんでもないことをしようとしているのは簡単に想像がついた。
俗にいう悪巧みというやつだ。
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なな - 更新頑張ってください!フエリドと夢主の甘い関係が好きです。 (2021年12月27日 22時) (レス) @page23 id: 0c7821053f (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとう(プロフ) - shiroさん» コメありがとうございます!力関係が逆なのに振り回されちゃう主人公可愛いですよね…。もともとはフェリドに振り回されてほしいと思って書き始めたお話なのでその点を褒めて頂けて嬉しいです。まだまだ今後もスローペースで続きますがよろしくお願いいたします! (2020年10月24日 21時) (レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
shiro - 夢主ちゃんがフェリドに仕えたり、人間だったりする小説は沢山読みましたが、夢主ちゃんの立場がフェリドより上という設定が今まで見たことないものですごく好きです!立場が上のはずなのにフェリドに流されちゃう夢主ちゃんが可愛いです。更新楽しみにしています! (2020年10月23日 4時) (レス) id: 33dd7ff75e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こんぺいとー | 作成日時:2020年9月18日 13時