15.悪巧み ページ12
フェリドから呼びつけられ、名古屋から遥々従者を伴ってやって来たクローリーはため息を吐いた。
従者を含む呼び出しとはこれまたろくでもない予感がする。
もちろんそれは当人であるチェスとホーンもいぶかしんでおり、今度はどんなことを始めるつもりだろうかと彼女たちも不満を漏らす。
彼と居ると飽きないが、それと面倒事は別に だ。
呼び出しにあったように彼の部屋へと向かう。
だだっ広い屋敷のなかを釈然としないものを抱えながら歩き、フェリドの部屋の前で足を止めた。
そして、ドアノブに手を掛けるが、その手に力を込めることはなかった。
不思議がっている従者へと静かにするよう人差し指を立てて促すと、その原因である部屋の中からの物音がより鮮明に聞こえた。
「クローリー様ぁ、これ……」
チェスが顔を真っ赤にするのも無理はない。
耳に入ってきたのは粘着質な水音。
さすがにこれで何も考えないほど鈍感ではない。
一度ノブから手を離す。
さすがのクローリーでもフェリド相手に水を差すような野暮なことをして反感を買いたくはない。
さて、どうしたものか。
ドアの前で考えあぐねていると、今度は同胞の血の香りが漂ってきた。
人間のように吸血欲をそそる香りではないものの、独特の鉄の香りは鼻を刺激する。
「…頃合い見計らって出直そう」
「そうですね」
長々とここで立ち止まって考えたところで、部屋の中に居る者に悟られるのは時間の問題だった。
サングィネムの街をある程度フラフラとして回れば良い頃合いになると思いたい。
戻って来ても同じようなら、もう帰っても良いだろうか。
時を同じくして、視察という名目の形ばかりな散歩をしていたウルドとルク。
退屈そうな表情を露骨に出すルクとは対象的に全く表情を出さないウルドが考えているのは専ら妹のことだ。
視察だの仕事だのはどうでも良い。
可愛い妹がとんでもない男の毒牙にかかろうとしている。
その男はAに引き摺られながらも、視界から消える直前に気味の悪い笑みを浮かべた。
それをウルドは見逃さなかった。
すぐさまその男の首を刎ねることも容易くできたが、それ以上に妹の反感を買うことはしたくない。
剣へと伸びかけた手を引っ込めはしたものの、それが正しい選択だったのかは疑問だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 132人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なな - 更新頑張ってください！フｴリドと夢主の甘い関係が好きです。 (2021年12月27日 22時) (
レス) @page23 id: 0c7821053f (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとう(プロフ) - shiroさん» コメありがとうございます！力関係が逆なのに振り回されちゃう主人公可愛いですよね…。もともとはフェリドに振り回されてほしいと思って書き始めたお話なのでその点を褒めて頂けて嬉しいです。まだまだ今後もスローペースで続きますがよろしくお願いいたします！ (2020年10月24日 21時) (レス) id: 61b77cc65e (このIDを非表示/違反報告)
shiro - 夢主ちゃんがフェリドに仕えたり、人間だったりする小説は沢山読みましたが、夢主ちゃんの立場がフェリドより上という設定が今まで見たことないものですごく好きです！立場が上のはずなのにフェリドに流されちゃう夢主ちゃんが可愛いです。更新楽しみにしています！ (2020年10月23日 4時) (レス) id: 33dd7ff75e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こんぺいとー | 作成日時：2020年9月18日 13時
