今日の相談「なんで」 ページ7
『漣くーん、手首痛いんだけど…』
ジュン「知らねぇですよ、そんな事。」
手首をぎゅっと机に押し当て、漣くんは押し倒したこの体制から一向に動かない。
酷く不満の色を宿していた瞳も、今は他の感情が入り交じり、ぐちゃぐちゃと濁ってしまっている。
ジュン「…A、さん…」
『…』
ジュン「…っなんで、なんで！アイドルを辞めちまったんですか…！あんたは、俺の…俺の、希望の光だったのに！！」
『漣くん…』
堰を切ったように流れ出す涙は、彼の頬を伝うことなく私の頬へと落ちてくる。彼の綺麗な琥珀色の瞳は、涙に濡れ、色気に濡れる。
彼の涙を拭いたかったが、生憎、彼の両手によってそれは叶わない。
『…泣かないでよ、漣くん。』
ジュン「…っ、泣いてねぇ、です。」
『敬語下手だねぇ、君。ほら、取り敢えず私の腕を離して。誰かに見られたらまずいし、漣くんの涙も拭えないでしょ？』
そう諭せば、彼は私の両手を抑えていた腕を退け、私から少し距離を取った。頑張って腕で顔を隠している辺り、涙を見られるのはやはり恥ずかしいのだろう。
『…ほら、泣かないで。擦ったら綺麗な顔が台無しだよ。』
ジュン「っ…あんたは、なんでそんなに優しいんですか…！」
『なんでって、今日は質問ばかりだね。…漣くんが大事だからに決まってるでしょ。』
立ったまま泣き続ける彼を座らせ、会議室に備え付けてあった蛇口を捻り、私のハンカチを濡らす。そっ、とそのハンカチを漣くんの目元に当て替えば、彼は一瞬だけ肩を浮かしたが、大人しくそれを受け入れた。
ジュン「俺、本当は…Edenの一員として、あんたを探り来たんすよ。最近の夢ノ咲は急速に力をつけている…だから、茨にあんたを探って来いって。探りを入れる身として、あんたの事は全てを疑ってかかれ、って…」
『…そう。』
ジュン「でも、やっぱり無理です。」
『え？』
涙が止まった綺麗な瞳に、彼は私を捕え、真っ直ぐに告げる。
ジュン「俺、Aさんが好きなんです。大好きで、憧れで…俺の、希望の光の一つなんです。…だから、疑うなんてできねぇです。」
『好き、って…』
ジュン「…へへ、昔っから、あんたに恋してました。あんたがステージ上で見せる、あの笑顔が好きでした。こういうの、リアコって言うんでしたっけ？」
涙で少し赤くなった瞼と頬を隠して、「覚悟しててくださいよぉ、Aさん」なんて、彼は言ってのけた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1513人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜透田 流(プロフ) - 勿忘草色の蜜蜂さん» ありがとうございます！HiMERUくんキャラを掴みきれてなかった自覚があったので、そう感じて頂けて嬉しいです！ (2022年4月14日 20時) (
レス) id: d6a7ece567 (このIDを非表示/違反報告)
勿忘草色の蜜蜂 - ひめる様ぁ…！すっごくよかったです！作者様ありがとうございます！ (2022年4月13日 20時) (レス) @page12 id: e814718385 (このIDを非表示/違反報告)
夜透田 流(プロフ) - moekaさん» コメントありがとうございます。現在作者の多忙につき、なかなか更新が出来ない状態となってしまい、今に至ります。本当に少しづつですが、下書きを進めていますので気長にお待ち頂けると幸いです。これからもよろしくお願いします。 (2021年10月18日 15時) (レス) id: d6a7ece567 (このIDを非表示/違反報告)
moeka(プロフ) - 続きの更新がなくて寂しいです。更新してくれたら嬉しく思います。楽しみに待ってます。 (2021年10月13日 3時) (レス) id: e9f0e4b4b1 (このIDを非表示/違反報告)
夜透田 流(プロフ) - しいなさん» コメントありがとうございます！コロナ禍ということもあり、大学生活が忙しく中々時間が取れず更新を止めておりました…少しずつでも進めていきますので、これからもよろしくお願いします！ (2021年4月29日 22時) (レス) id: d6a7ece567 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夜透田 流 | 作成日時：2020年3月23日 14時
