第七十五話 今一度 ページ33
愛染Aside
『さて、無事お話も終わったことですし、地図も丁度完成致しましたし、今一度お館様の元へ参りましょうか。』
産屋敷様、改めお館様の御屋敷へ向かうべく、私は手元の硯や墨を片付け、乾いた地図を赤い髪紐で括る。括るのが髪紐なのは、単に紐が無かったからだ。
宇髄「おい、まだ作戦は考えてないだろ。」
『作戦云々は事件の全貌を明らかにしてからのがいい。…天元さん達はまだ理解しきれてないでしょ?』
昔、ここで過ごした時のように名前で呼べば、天元さんは分かりやすく頬を緩める。それから咳払いを一つして、彼は「確かに、そっちの方がいいかもな。」と言いながら腰を上げた。
所変わって産屋敷邸。
御挨拶もそこそこに、お館様にこれまでのことを話し、和解だか仲直りだかなんだか知らないが、今一度信頼関係を取り戻しつつある事を告げれば、彼の人はそれはそれは嬉しそうに笑った。
そして、依然として隣に並ぶ私の頭を、優しく撫でるのだ。それはそれは、幸せそうな顔をして。
産屋敷「ふふ、良かった。私も自分のことのように嬉しいよ。」
『勿体ないお言葉…ありがとうございます。』
産屋敷「そのままの流れで、鬼殺隊に戻ってきてくれてもいいんだよ?」
嬉しそうに顔を綻ばせたまま、お館様はそう仰るが、私はゆるゆると首を振り、丁重にお断りした。
『今の私が成すべきことをしたいのです。鬼殺隊には戻れませぬ。…ですが、今回の事件のこともあり、鬼殺隊の政府公認への道は更に遠退きました。今暫く、ここに留まります。きっと、一、二年じゃあ、足りないでしょうね。』
産屋敷「うん、そうだね。…それじゃあ、もう暫く…ここで存分に刀を振るっておくれ、特高殿。」
悪戯に頬を持ち上げれば、お館様は一瞬驚いたような顔をするが、その後にまた柔らかく微笑み、私の両手を力強く握った。
見えるはずのない彼の人の瞳は、私をしっかりと捕らえていたことだろう。
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夜透田 流(プロフ) - ゆっくり四つ葉さん» これからちょこちょことしか更新できなさそうなのですが、頑張って完結に向かいたいと思います…!本当にありがとうございます!! (2020年8月21日 17時) (レス) id: d6a7ece567 (このIDを非表示/違反報告)
夜透田 流(プロフ) - ゆっくり四つ葉さん» コメントありがとうございます!!そうなんです!小説のそのシーンを書いてからアトラクライトの存在を知ったので実は無意識で似たセリフを出していたみたいなんです…アトラクライトめちゃくちゃ鬼滅とピッタリですよね…! (2020年8月21日 17時) (レス) id: d6a7ece567 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくり四つ葉 - アトラクトライトの歌詞入ってる!オァァァ!!ぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!…すいません。はい。素晴らしい作品をありがとうございます! (2020年8月21日 17時) (レス) id: 135b7cf6d1 (このIDを非表示/違反報告)
夜透田 流(プロフ) - 霞さん» 伊黒さんの心中が複雑すぎるのも考えものですね…解説付けたので良かったら読んでみてください〜 (2019年11月22日 9時) (レス) id: 787493054e (このIDを非表示/違反報告)
霞 - 伊黒さんいつからなんだ…蜜璃ちゃんより夢主がいいのかそうだろう夢主健気すぎてもういい子すぎだからな…!夢主の方が正しかった許された(?)から好きとかじゃないよな…努力云々はいなくなってから気付いたはずなのに結局最近まで嫌ってたんだし…? (2019年11月21日 23時) (レス) id: ce151a9693 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜透田 流 | 作成日時:2019年11月7日 17時