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第七十四話 この思い ページ31

冨岡義勇side


悲鳴嶼「最後は、私か。」

『無理にお話ならなくても結構ですよ。』




無表情とも笑顔とも云えぬ模糊たる顔をした彼女は、じっと悲鳴嶼さんを見詰めている。




悲鳴嶼「…嗚呼、この目で君の顔を見れたなら良かったのに。」




ポツリ、と悲鳴嶼さんが小さく零したのを、誰もが聞き漏らさなかった。彼の頬に一筋の涙が零れる。




悲鳴嶼「…私は君を深く知る前に、君の事を周りの虚偽に振り回されて決め付けてしまった。慈悲も思慮も無い人だ、と。よくよく聞けば、それが彼らの猜疑の念だった事は明々白々だった。…A。君がそんな人でないと知った時、私は涙で思考が滲んだ。伊黒は語らなかったが、気づいてすぐに君を信じられた訳では無い。実際には会っておらんのだ、信じられる訳が無かった。」

伊黒「…悲鳴嶼殿、それは…」

悲鳴嶼「敢えて言わなかったのだろう…だが、ここではそれは最適では無い。」




悲鳴嶼さんは、彼の隣で元から小さい身体をさらに縮こませる、伊黒の頭を軽く撫でる。伊黒は撫でられると思ってもみなかったのか、小さく肩を跳ねさせた。




悲鳴嶼「…こればかりは、神に許しを乞うても解決しない。君に許しを乞うても、解決しない。ならば、君の気が済むまで、私の命が尽きるまで、君に着き従おう。」




いつもの間は無い。はっきりとした物言いで、この場で最年長を誇る悲鳴嶼さんはそう言った。
そんな彼を、彼女はじっと見つめた後、細く息を吐いた。




『では、悪鬼を滅殺してください。』

悲鳴嶼「それでは、今までと…」

『変わらぬと仰りたいのでしょう?いいえ、変わりますとも。最高の罰だと思いませんか?…貴方は、刀を握れなくなるまで、己が命が尽きるまで…鬼を殺さなくてはならぬのですよ。』




にこり、と可愛らしい笑顔を向けて『勿論、他の方々も。』なんて語尾に桃色が散りばめられたような声色で言う。可愛らしいが、なんとも末恐ろしい。




『…小芭内さん、行冥さん。私は…もう、守られるばかりの妹じゃありませんよ。』

悲鳴嶼「…うむ。」

伊黒「ふん。妹は、いつの時代も守られるものだ。」

『その固定概念を消しされっつってんですよ。頭ん中餡子でも詰まってんですか。』

伊黒「なんだと?大体お前はいつも考え方が…」




伊黒とAが、両者共に青筋を立ててそう言い合いを始めるが、それが些か心地良い。それがまるで、昔のようだからだろうか。

お詫びと解説→←第七十三話 ずるい人



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夜透田 流(プロフ) - ゆっくり四つ葉さん» これからちょこちょことしか更新できなさそうなのですが、頑張って完結に向かいたいと思います…!本当にありがとうございます!! (2020年8月21日 17時) (レス) id: d6a7ece567 (このIDを非表示/違反報告)
夜透田 流(プロフ) - ゆっくり四つ葉さん» コメントありがとうございます!!そうなんです!小説のそのシーンを書いてからアトラクライトの存在を知ったので実は無意識で似たセリフを出していたみたいなんです…アトラクライトめちゃくちゃ鬼滅とピッタリですよね…! (2020年8月21日 17時) (レス) id: d6a7ece567 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくり四つ葉 - アトラクトライトの歌詞入ってる!オァァァ!!ぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!…すいません。はい。素晴らしい作品をありがとうございます! (2020年8月21日 17時) (レス) id: 135b7cf6d1 (このIDを非表示/違反報告)
夜透田 流(プロフ) - 霞さん» 伊黒さんの心中が複雑すぎるのも考えものですね…解説付けたので良かったら読んでみてください〜 (2019年11月22日 9時) (レス) id: 787493054e (このIDを非表示/違反報告)
- 伊黒さんいつからなんだ…蜜璃ちゃんより夢主がいいのかそうだろう夢主健気すぎてもういい子すぎだからな…!夢主の方が正しかった許された(?)から好きとかじゃないよな…努力云々はいなくなってから気付いたはずなのに結局最近まで嫌ってたんだし…? (2019年11月21日 23時) (レス) id: ce151a9693 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夜透田 流 | 作成日時:2019年11月7日 17時

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