第七十一話 秘めた想い ページ28
胡蝶しのぶside
『杏寿郎さん。私、嬉しかったんです。嫌いだと言いながら、私にきちんと感謝を伝えてくれる杏寿郎さんは、密かに心の支えになっていた。…貴方は酷く真っ直ぐだから、一緒にいて心地良かった。』
力無く笑う彼女の目は、少し赤くなっていて、小さな手は依然として炭治郎君の羽織を掴んでいた。
『しのぶちゃん。私、しのぶちゃんの自分を犠牲にしてしまう所が大嫌い。なんでも一人で抱えてしまう貴女が嫌い。だって、自分を見ているようだから。…誰かの為に自分を押し殺せるのは、時には武器になるかもしれない。だけど、それを私の為に使って欲しくなかった。』
小さく小首を傾げ、『嫌いだなんて言ってごめんね』と眉を下げて笑う。あぁ、この顔は、私が貴女に「触らないで」と言った時の顔だ。
酷く悲しげで、何かを我慢する優しい笑顔。
不死川「…A。お前は強かった。」
『…』
不死川「酷く努力家で、何事にも真っ直ぐで、誰よりも強い信念を持った剣士だった。俺は、お前が夜遅くまで鍛錬しているのを何度か見た事がある。一心不乱に刀を振るうお前は、剣士の檻で、…俺の、憧れだったんだ。お前のが年下だけどなァ。」
自嘲気味な笑みを浮かべて、不死川さんは膝に置いた自身の拳を強く握る。だが、決して視線は彼女から逸らさない。
不死川「憧れもしたが、同時に怖かった。お前ほど腕の立つ奴は、鬼殺隊はきっと誰も手に負えねェ。…光条が、好きだった。あいつを傷付けたく無かった。恋は盲目ってのは、この事だなァ。…後悔してる。きっとこの後悔は、お前に謝ったって、お前に許してもらったって、何をしたって拭えねェ。だから俺は、この後悔の念を胸の内に抱えたまま、この身に刻んだまま、お前の為に生きる。」
握った拳を胸に当て、不死川さんは彼女を口説くかのような台詞を吐いて前を見据える。恥ずかしくないのか、とも思ったが、無意識であんな事を言えるのが、不死川さんの良い所でもある。故に、違和感なんてものは微少も感じないのだ。
『…ほんと、実弥さんは男らしい人ですね。』
頬を少し染め、『ふふ』なんて照れたように笑う彼女は、私が彼女の瞳を褒めた時の顔に似ている。可愛らしくて、儚くて、守ってあげたくなる笑顔。
彼女の手の震えも、段々と収まっていっていた。
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夜透田 流(プロフ) - ゆっくり四つ葉さん» これからちょこちょことしか更新できなさそうなのですが、頑張って完結に向かいたいと思います…！本当にありがとうございます！！ (2020年8月21日 17時) (
レス) id: d6a7ece567 (このIDを非表示/違反報告)
夜透田 流(プロフ) - ゆっくり四つ葉さん» コメントありがとうございます！！そうなんです！小説のそのシーンを書いてからアトラクライトの存在を知ったので実は無意識で似たセリフを出していたみたいなんです…アトラクライトめちゃくちゃ鬼滅とピッタリですよね…！ (2020年8月21日 17時) (レス) id: d6a7ece567 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくり四つ葉 - アトラクトライトの歌詞入ってる！オァァァ！！ぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ！！…すいません。はい。素晴らしい作品をありがとうございます！ (2020年8月21日 17時) (レス) id: 135b7cf6d1 (このIDを非表示/違反報告)
夜透田 流(プロフ) - 霞さん» 伊黒さんの心中が複雑すぎるのも考えものですね…解説付けたので良かったら読んでみてください〜 (2019年11月22日 9時) (レス) id: 787493054e (このIDを非表示/違反報告)
霞 - 伊黒さんいつからなんだ…蜜璃ちゃんより夢主がいいのかそうだろう夢主健気すぎてもういい子すぎだからな…！夢主の方が正しかった許された(？)から好きとかじゃないよな…努力云々はいなくなってから気付いたはずなのに結局最近まで嫌ってたんだし…？ (2019年11月21日 23時) (レス) id: ce151a9693 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜透田 流 | 作成日時：2019年11月7日 17時
