守る者�� ページ6
「…審神者殿」
一期一振が、突然深く頭を下げた。
「一期一振さま？」
「いち兄！？」
「私は正直、まだあなたを信じることができません。しかし弟たちを…いえ、我々を助けて頂いたこと心からお礼申し上げます」
兄の行動につられ回りの短刀たちもペコリと腰を折った。
「そしてあなたに対し牙をむいたこと…何とお詫びすれば良いのか。本当に申し訳ないことを致しました」
それは心からの謝罪であり、身内を助けられたことに対しての素直な感謝の気持ちだった。
潔い態度と兄弟を想う優しい心。
彼らの温かな一面が好ましかった。
「皆さまは良いご兄弟ですね。どうかお顔を上げて下さい」
「しかし…っ」
「鬼遊びをやると決めたのは私です。時間遡行軍に刀を振るったのも、腕の傷も全て私の意思。皆さんが謝ることは何一つありませんよ」
「………」
「さぁ、体が冷える前に中に戻りましょうか」
けろりとしたAの態度に一期一振らは面食らってしまった。
自身の命が危険にさらされたというのに、そんなに簡単に片付けても良いのかと、逆に聞きたくなるくらいだ。
「では審神者殿、私共の部屋まで一緒に来ていただけますか？せめてもの償いに腕の手当てをさせて頂きたいのです」
「え？でも…」
「大将。ここは俺たちの気持ちを汲んでもらえないか？遠慮するなんてナシだぜ」
風が吹き上がった。
闇が散り、光が入り込む。
先ほどまで淀み濁っていた中庭の空気が嘘のように澄み渡っていく。
眩しい輝きに短刀たちは空を仰ぎ見る。
久しぶりに見上げた美しい空の色に感嘆の溜め息を漏らすのだった。
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作者名：コトナガ | 作成日時：2019年9月6日 0時
