長編小説【刀剣乱舞】白の審神者と黒の本丸～其ノ弐 (ページ29)

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初期刀～① ページ29

【加州side】

…。

…。

…あれ、なんだっけ？

目に入ってきたのは見慣れた本丸の天井だった。

違うのは自分の部屋じゃないってこと。

……？

……あれ。

…俺、生きてる？

…何で？
折れたはずじゃ…？

――ちょっとした憂さ晴らしのつもりだったんだ。

もやもやした気持ちをなんとかしたくて、本丸を飛び出した。

安定と二人で勝手に出陣して、遡行軍と戦闘になって…。

ボロボロに負けた……。

何とか逃げて来たけど、ヒドい怪我だった。

折れてもおかしくなかった。

なのに、なんで生きてんの…。

安定は無事…？一体どうなったの？

「……っく」

体が痛い。

おまけに全然力も入んない。

「お目覚めですか？」

「！？」

突然声がした。

「おはようございます加州さま。御加減はいかがですか？」

　

そこには主の姿があった。

しかも…。

主の膝を枕にして、すやすや眠っている安定の寝顔が目に入った。

なに、この状況…？

「よかった。顔色もよろしいようですね」

「……え、どういうこと…？」

一体、俺の知らない間に何がどうなったわけ…？

―――――――

【加州side】

「…精神の移動？」

「はい。付喪神を含め、神様はもともと精神体ですから一時的に体から切り離すことが可能だと考えました」

俺はこれまでの経緯について説明を受けた。

話によると、俺はやはり一度折れたことになるらしい。

だけどそれは【外側】だけの話。

【内側】は今までと何ら変わらない。

だから、折れる前の記憶もハッキリしてるらしい。

「つまり中身をそのままに、俺の体だけを新しく造り直したってこと？」

「その通りです。加州さまには何の断りもなく、勝手なことをしてしまいましたが」

「そんなのどうでもいいよ。助けてもらっておいて今さら文句なんてあるわけないし…」

「ふふ、ありがとうございます」

「…それもこっちのセリフ。それにしても、そんなことできるんだね」

「ええ。知識と技術と度胸さえあれば」

「……」

…いやいやいや。
　

ありえない。

こんな芸当、そう簡単にできるわけない。

この人、益々常軌を逸してるって言うか…。

何でもないような顔してるけど、相当な霊力を消費しているはずだ。

…まったく、本当にとんでもない。