長編小説【刀剣乱舞】白の審神者と黒の本丸～其ノ弐 (ページ17)

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主の正体～① ページ17

部屋に入るなり、髭切はAの顔を覗き込んだ。

「ねぇ主。早速だけど聞いてもいいかな？」

「はい、どうぞ」

「主って人間じゃないでしょう？」

「！？」

髭切の質問にぎょっとして振り向いたのは、なぜか膝丸だった。

「あぁ、はい、そうですね」

「は！？」

けろりと答えたAに、一番驚いたのも膝丸だった。

「主が人間じゃないとは一体…？」

「私はここへ来る前、天界でとある神さまに仕えておりました」

「へぇ、どおりで人間離れしてるよねぇ」

「あ、兄者どういうことだ…？」

「見てのとおり彼女の力は人の身に余りあるものだろ？普通じゃないのはすぐにわかったよ」

霊力、精神力、戦闘力。

どれを取っても普通の【人間】ではない。
そう思えるほどの材料がすでに揃っていた。

「髭切さまは私の正体にお気付きだったのですね」

「うん。それと君の気配には覚えがあった。もう1000年も前の話だから忘れかけていたけど…」

髭切の目が細められた。

「僕は昔、君と同じ種(しゅ)の者を斬ったことがあるよ」

その伝説が元となり、重宝【髭切】は【鬼切丸】と名を改めたことがあった。

一呼吸置いて、髭切が口を開く。

「君は【鬼】だろう？」

一呼吸置いて、Aが頷く。

「えぇ、そうです」

答えと同時に、部屋の襖が勢いよく開いた。

「しょうたいをあらわしましたね」

幼く、冷えきった声が響く。

そこに立っていたのは三条の刀剣男士たちだった。

「何事だ！騒々しい！！」

「突然お邪魔して申し訳ないね、源氏の御兄弟。さて、鬼という災厄を落としにきたよ」

「がははは！審神者の正体がまさか鬼とはなぁっ！これは楽しめそうだ！！」

「…鬼。狐と踊れ」

全員殺気立ち、Aを睨み付ける。

「おやおや、これはお揃いだねぇ」

「お前たち、突然無礼だろう！」

髭切と膝丸はAを下がらせる。

「薄緑(うすみどり)、そこをどきなさい。ぼくたちはそこのおににようがあります」

今剣が短刀を抜いた。

「落ち着け今剣。主をどうするつもりだ」

膝丸も腰の太刀に手を掛ける。

「もちろんころします。このほんまるにあるじはいりませんから」

「この方は審神者としての役目を果たそうとしている。すでに易々と殺していい存在ではないぞ」

睨みあう二振。
互いにどちらも引く様子が見えなかった。