長編小説【刀剣乱舞】白の審神者と黒の本丸～其ノ弐 (ページ14)

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手入れ～一期一振side② ページ14

【一期一振side】

(審神者、か…)

横顔をまじまじと見つめた。
その表情は真剣そのものだ。

―――主。

(今さらそうお呼びするのは虫が良すぎるだろうか…？)

しかし、ずっと「審神者殿」とお呼びするのも失礼にあたるだろうし。

あるじ…、主か…。

「……主」

「はい、なんでしょう」

「…！？」

顔を上げると審神者殿がこちらを見ていた。

「呼びましたか？」

「えっ！？いや、お呼び…しましたか？？」

「え？あ、はい…呼ばれました」

しまった…。

考えていたことが無意識に口から出てしまった。

「一期一振さま？」

「あの…その、今さらなのですが…主、と呼ばせて頂けないでしょうか？」

彼女にあれだけの無礼を働いた私だ。
今さら礼を持って接するなど都合が良すぎる。

呆れられただろうか？

恐る恐る頭を上げると、そこには微笑む審神者殿がいた。

「そう呼ばれても恥ずかしくないよう、私ももっと頑張らねばなりませんね」

…この方は心が広い。

普通、自分に刃を向けた者を受け入れられるものだろうか。

少なくとも、こんな方にお会いしたのは初めてだ。

「では改めて主。これからどうぞよろしくお願いいたします」

私は深々と頭を下げた。

「私のことは一期一振とお呼び下さい。弟たちも呼び捨ててもらった方が気が楽でしょう」

すると主は少し困った顔をして笑った。

「…やはり私は気安い神様たちにご縁があるようです」

「え？」

「何でもありません。ふふ、こちらこそよろしくお願いいたします」

主は静かに笑う。
その笑顔は光のように温かく、慈愛に満ちていた。

――主。

弟たちの他に守るべき者が出来た。

その充実感に、私の心は満たされるのだった。