長編小説【刀剣乱舞】白の審神者と黒の本丸～其ノ壱 (ページ48)

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鬼遊び～襲撃① ページ48

【鬼遊び～中庭にて～】

「あれ、いち兄達だ！」

「ほんとだ」

「鯰尾兄さんと骨喰兄さんも一緒ですね」

審神者を探してはや数時間。

中庭で休憩していた乱たちは、向こうから歩いてくる兄の姿を見つけた。

「おーい！いち兄ぃ」

呼び掛けると向こうも気付き手を降り返す。

「いち兄たちも審神者を捕まえてないみたいだな」

「ほんとにどこ行っちゃったんだろうねー」

厚と乱は庭石から飛び降りた。

その時。

「危ない！！！」

誰かが叫ぶ声が聞こえた。

その声と、大きな影が現れたのはほぼ同時だった。

「避けろっ！！！」

咄嗟に反応した三振の短刀たちは、滑るように地面を転がった。

頭上で巨大な刀が宙を斬る。

「…っなんだ！？」

振り返った先に見たものに、彼らは目を見開いた。

そこにあるのは禍々しく、狂気を宿した気配。

濃い闇を纏い、歴史改変を目論む異形の存在。

―――時間遡行軍。

「何でこんな所に…！？」

「みんなっ、下がれ！！」

敵の虚ろな目が短刀たちを冷たく見下ろしていた。

【～大廊下にて～】

本丸の空気が震えた。

空はみるみる鉛色に染まり、重く暗い気配が辺りを支配している。

「主さまぁ！」

甲高い声と共に、必死に駆けてくる小さな狐の姿があった。

薬研と加州の脇をすり抜け、勢い良くAの胸に飛び込んだ。

「こんのすけ」

「主さまっ、大変です！ってその腕、お怪我を！？」

「心配入りません。それよりもどうしたのですか？」

「敵が、時間遡行軍が現れました！」

その言葉に、全員が刀を構えたまま振り返った。

「時間遡行軍？」

「どういうことだ？」

「本丸内に時間遡行軍が出現し襲撃を受けています！現在、粟田口の６振が応戦中です！！」

薬研の顔が青ざめた。

「こんのすけ、案内を」

「お任せ下さい！」

「待ちなよ。どこに行く気？」

すかさず加州と大和守が行く手を阻んだ。

「時間遡行軍のところへ行きます」

「やめなよ。アンタが行っても何も出来ないでしょ」

「戦うのは僕らの役目。君は邪魔にならないよう大人しくしてたら？」

「お二人こそ、行くつもりですか？」

「どういう意味？」

二人の眉がピクリと動く。

長く審神者が不在だった本丸に、無傷の刀剣男士はいない。

皆、何らかの怪我を負っている。

この二人も例外ではない。

Aの問いに二人はニヤリと嗤った。