長編小説【刀剣乱舞】白の審神者と黒の本丸～其ノ壱 (ページ32)

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鬼遊び～昼寝③ ページ32

【鬼遊び～昼寝】

数分後、小さな寝息に気づいた明石はごろりと寝返りを打った。

「ほんまに寝たんか…？」

見ると、壁にもたれて座っていたはずの審神者が、床の上に完全に寝転がっていた。

命を狙われ逃げ回っている身とは思えない無防備っぷりだ。

「…襲われたらどうする気なんやろ」

明石は目の前の審神者を改めて眺める。

白い肌と色素の薄い髪が、日の光を反射してきらきら輝いている。

あどけない表情で眠るこの少女は、おそらくあと数時間後には殺されてしまう。

たかが審神者の力を持つだけの人間が、刀剣男士相手に生き残れるはずがない。

「可哀想やなぁ…」

ここで寝込みを襲われればひとたまりもないだろう。

次に起きた時、もう彼女は生きていないかもしれない…。

そう思うと、何とも言えない気持ちが込み上げてきた。

明石はそんな想いを振り切るようにAに背を向けると、再び昼寝を再開するのだった。

【明石side】

鬼遊びが始まった。

審神者を追い回して殺してまう、あの人らお気に入りの暇潰しや。

悪趣味やと思う。狂ってると思う。

でも審神者を助けようなんて、そんなことは思わん。

面倒事に関わるのはごめんやしね。

自分はこの本丸の中で、かなり遅く顕現された方やった。

気付いた時には、自分を顕現してくれた審神者は他の刀剣男士たちに殺されとった。

怒りや恨み、そういう感情は一切持たんかった。

あぁ、ここはこういう場所なんやと自然と受け入れた。

正直、身内以外はどうでもええと思っとる。

もっと言うと、愛染と蛍丸さえ無事なら他の奴等がどうなってもかまわへん。

そんな考えと性格が幸いしてか、自分は闇に染まらんかった。

自分だけやない。愛染も蛍も堕ちることなくなんとかなっとる。

そんならこれからも、保護者として二人を守っていくだけや。

そのためなら、他のことなんかどうだってええ。

新しい審神者にも興味あらへん。
鬼遊びももちろん不参加や。

あれが終わるまで、静かな場所で昼寝でもしよ思っとったが、まさかここに審神者が来るとはなぁ。

ほんまなら連中に審神者をつき出せばええのかも知れんなぁ。

そしたらこの茶番も即終了。

…でもなぁ、なんか。

この人を見とると、殺すのは惜しいような気がせんでもないような…。

少しやけど話してみて思った。

このお人、たぶん、えらいまともなお人や。