長編小説【刀剣乱舞】白の審神者と黒の本丸～其ノ壱 (ページ29)

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心境③髭切side ページ29

【心境～髭切side】

真っ白だったはずの鶴丸は、闇で真っ黒に染まっていた。

新しい審神者がやって来る度、本丸の闇は濃くなる一方だった。

鶴丸だけじゃない。

一振、また一振と仲間たちの心も、日に日に黒く塗りつぶされていくようだった。

あれは何代目だったかな。

若い男の審神者だった。

彼は刀剣が好きだと言っていた。

歴史に関与してきた刀剣たちを大切に扱いたいと言った。

そして、多くの逸話が残る僕ら兄弟にも強く興味を示した。

「名刀同士が戦ったらどうなるんだろう？」

そんな彼の思いつきから全ては始まった。

刀剣男士同士の斬り合い。

もちろん、僕らに仲間を傷付ける気なんて更々なかった。

でも、彼はそれを良しとはしなかった。

僕らは術を掛けられ、無理やり戦わされるようになった。

重症を負っては手入れされ、また重症を負わされる。

意味のない茶番が何度何度も繰り返された。

そして、ついに最も怖れていたことが起こった。

「破壊されるまで戦ってみせてよ！」

狂った審神者は子供のように目を輝かせる。

沢山の仲間が折れていった。

残された者は絶望に泣き叫んだ。

目を覆いたくなる惨状はまさに地獄だった。

そんな毎日が続いたある日、僕ら兄弟はその審神者を斬り殺した。

男は血を撒き散らし、呆気なく死んでしまった。

皆のためじゃない。
自分たちのためだった。

この先ずっと殺し合いをさせられるなんて耐えられなかった。

誰かを折るくらいなら、闇に染まる方がマシだと思った。

案の定、僕らは日に日に邪気を集め、見事に闇に堕ちた。

あの日のことは後悔していない。

だけどあの行いが正しかったのか、悪かったのかも分からない。

所詮僕らは人殺しの道具だ。

新しく来たあの審神者の少女は、こんな僕らをどう思うのだろう？

人殺しだと罵って、軽蔑するのか。

命を奪ってはいけないだとか綺麗事を並べるのか。

どっちにしろ、受け入れられることはない。

そう言えば、鶴丸が言ってた【彼女の覚悟】って何だったのかな。

彼女は鶴丸を探しに来るんだろうか…。

僕はあの審神者のことをよく考えるようになった。

考えれば考える程、興味は更に強くなっていく。

さっさと殺して鶴丸の目を覚まさせなければと思っていたけど、どうしてこんなにも彼女のことが気になるのか…。

鶴丸と行動していれば、何か分かるのかな。

そして彼女に、また会えるだろうか。