長編小説【刀剣乱舞】白の審神者と黒の本丸～其ノ壱 (ページ28)

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心境②鶴丸、髭切side ページ28

【心境～鶴丸side】

この二人は何の話をしている？

嫌な予感がした。

まさか。

「君たち…主に、何かしたのか？」

問うと髭切が笑みを浮かべた。

「彼女には僕らと一緒に遊んでもらうことになったんだ」

「まさか、鬼遊びを…？」

「当たりー」

血の気が引いた気がした。

「可哀想だけど、生きた彼女にはもう会えないかもしれないね」

「…っ、お前ら！！」

「そんなに怒るな。皆、お前を心配しているんだぞ。なぁ兄者」

二人はやれやれと顔を見合せる。

俺は馬鹿か。

こんなこと、わかってたはずだ。

俺の説得ひとつで、今まで拒絶し続けた審神者を皆が簡単に受け入れるわけがなかった。

どうやら俺は主の優しさに触れて一人で舞い上がっていたようだ。

自分の考えの足りなさに嫌気がする。

『人に信じてもらうと言うのは、簡単なようで難しいものですから』

初めて会った日、主はそんなことを言っていた。

今になってその言葉を思い出す。

主、君の言う通りだ。

今までそんなの真面目に考えたことがなかった。

くそっ、こんな時に俺は何をやっている。

信じられる人ができたのに。

守りたいと思える人ができたのに。

主、無事でいてくれ。

まだ出会ったばかりじゃないか。

俺は君を失いたくない。

また君に会いたい。

また君に触れたいんだ。

話したいことがまだまだ沢山ある。

必死に歯を食い縛る俺を、髭切と膝丸が不思議そうに眺めていた。

「…なぁ、兄者」

膝丸が呟く。

「あんなに誰かを想える鶴丸が、俺は少し羨ましいよ」

その会話はあまりにも小さくて、俺の耳には届かなかった。

【髭切side】

鬼遊びの間、鶴丸を別室に隔離すると聞いた。

僕は彼の見張りを申し出た。

弟も僕の気持ちを汲んでか、特に反対しなかった。

「兄者は鶴丸が気になるのか？」

「ん、おしい。正確には鶴丸とあの審神者が気になる、かな」

一時期の鶴丸はとにかく荒れていた。

繰り返される審神者たちの暴挙。

恨みと憎しみにすっかり心を呑まれていた。

彼は本来優しい刀だ。

同じく古い時代の太刀として、僕ら兄弟は何かと鶴丸と接する機会が多かった。

だから彼の絶望がどれ程のものだったか、近くにいた僕らはよく知っている。

そして、積もりに積もった闇が彼を蝕んで行くのに、そんなに時間はかからなかったのだ。