長編小説【刀剣乱舞】白の審神者と黒の本丸～其ノ壱 (ページ26)

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遊戯④ ページ26

【遊戯】

Aは表情を変えることなく、平静を保つ。

「ふむ、普通の女なら卒倒してもいい状況だが、なかなか肝が座っている。やはりお前は面白いな」

顎に手を当て、何かを考えているようだった。

「…鬼遊びでもするか」

三日月の口から意外な言葉が発せられた。

「鬼遊び？」

聞き違いかと思ったが、そうではないようだ。

「鬼役が人を追い回す、あの遊びでしょうか？」

「うむ、そうだ。せっかくだ、我らとの親睦を深めようじゃないか」

「………」

親睦を深めるための鬼遊びとは、なんとも不自然な流れだ。

「鬼は私達が務めます。逃げるのはあなた一人です」

三日月に代わり、一期一振が答えた。

「ちなみに、捕まったら私はどうなるのでしょうか？」

「さて、それはわかりかねますな。何せ、誰に捕まるか、まだ決まっていませんから」

なんと、処遇は捕まった人に委ねられるらしい。

「刻限まで逃げ切れたら審神者殿の勝利となります」

「………」

この状況で提案された鬼遊び。

その目的は、やはり審神者を殺すということだろう。

しかしただ殺すだけではつまらない。

苦痛を与えながら泣き叫ぶ姿を見て嘲笑う。

つまり、捕まれば命はない。

今は、話合いでの解決は難しい。

「わかりました」

これが彼らのやり方なら、従ってみるのも悪くない。

「よい返事だ。おまえが勝ったあかつきには、望みを一つ叶えてやろう」

ピリピリとした殺気が広間に満ちていた。

そう、これがただの「鬼遊び」であるはずがない。

Aは目を閉じ呼吸を整える。

普通に考えれば尋常ではない不利な条件だ。

しかも「遊び」とはいえ相手は神。

本気で挑まなければ確実に殺されてしまうだろう。

長い長い一日が始まろうとしていた。

「鬼はこの本丸の刀剣男士全員。刻限は日没までとします」

目を開けた瞬間、一斉に抜刀する音が響き渡った。

Aは身を翻す。

長谷部と一期一振の刀を一瞬でかわすと、一目散に廊下へ飛び出した。