長編小説【刀剣乱舞】白の審神者と黒の本丸～其ノ壱 (ページ25)

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遊戯③ ページ25

【遊戯】

「鶴に抱かれでもしたか？その程度で奴が気を許すとは思えんが」

「……」

Aは落ち着いた様子で、頬に添えられた手を掴むと、真っ直ぐに三日月を見据えた。

「…話をしました。鶴丸も人間が憎いと言っていました。これまで何人もその手に掛けてきたと。私のことも信用できないと言っていたのに、それでも怖れず向き合おうとしてくれました。…あなた方を助けたいと本音を語ってくれました」

　
Aの言葉に広間が静まり返った。

「そんな彼の想いに、私も応えたいと思っています」

三日月の手が頬を離れた。

彼の顔から張り付いたような笑顔が消えていた。

―――――――

それは昨夜のことだった。

三日月も言っていたとおり、刀剣男士たちの中でも、鶴丸は特に審神者を恨んでいたうちの一人だった。

その彼が、審神者をもう一度信じたいと言い出した。

彼女はこれまでの奴らとは違うと、必死に皆に訴えた。

そんな鶴丸の変化に彼らは大いに驚き、同時に審神者に興味を示した者も多かった。

「奴が鶴丸殿に何かしたとしか考えられんだろう」

「そうですよ！さっさところすべきです！」

「でも、鶴さんがそう簡単に唆されるだろうか」

「なんか俺、あの人に興味沸いちゃったかも」

「え、本気で言ってるの？」

「僕はやっぱり怖いな」

「俺も」

　
「やはり早々に始末すべきでしょう」

「そうだな」

「でも、悪い人には見えなかったです…」

様々な意見が飛び交い、刀剣男士たちはある結論に至った。

――――――――

Aは回りの気配を伺う。

ここにいる刀剣男士たちは、二十人弱といったところだろうか。

廊下にも数人控えているようだ。

(もしもの時はふり切って逃げ切れるでしょうか…)

そう思った瞬間、

「待て小娘」

長谷部と一期一振が目にも止まらぬ早さで刀を抜いた。

一瞬でAの喉元に刃を押し当てる。

「逃げる算段か？随分余裕だな」

「行かせません。何を企んでいるのか知りませんが、やはりあなたは危険だ」

後ろには長谷部、正面には一期一振。

二人はAの小さな動きにも神経を集中させ、出方を伺っていたようだ。

そんな中、再び刀を突きつけられるAを見ながら、三日月は愉快そうに嗤うのだった。