長編小説【刀剣乱舞】白の審神者と黒の本丸～其ノ壱 (ページ22)

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近づく距離④ ページ22

【近づく距離～Aside】

　
「…なぁ」

　
「はい、何でしょう」
　

「君みたいな女子を、魔性の女と言うのか？」

　

鶴丸がなんだかとんでもないことを言ったような気がしました。

もうすっかり落ち着いていますが、胸に抱いたまま、なぜか私を離そうとしません。

「…魔性、ですか？」

「君からは何か、俺たち刀剣男士を惹き付ける、不思議な力を力を感じる」

　
「そうでしょうか」

「あぁ。しかも、広間の時といい、今の状況といい、随分と男の扱いに慣れているしな」

「そ、そうでしょうか…？」

鶴丸の突飛な発言に、一体何と返せばいいのでしょう…。

男性の扱いに慣れている…？

つまり、男性に対して、物怖じしていないと言っているのでしょうか。

「私の家族は二人とも男性なので、きっとそのせいかもしれませんね」

「そうなのか？それだけじゃない気がするが……いや、まぁいいが」

鶴丸もどこか腑に落ちない様子でしたが、とりあえず、魔性の女について深く考えることをやめたようです。

「なぁ、A」

　
「はい」

「おいおい、そんなに簡単に返事をしていいのかい？俺は君を隠すつもりかも知れないぞ」

「え、それは困ります」

　

すると鶴丸が何やら嬉しそうに笑いました。

　
「ははっ！すまんすまん。うん、今のは冗談だ。驚いたか？君をどこかへ隠すなんてするわけないだろう。目の届く所にいてくれないと面白くないぜ」

　
「ふふ、安心しました」

　
「なぁA。さっき俺のことを綺麗な太刀だって言ってたが、もっと男らしいとこもちゃんと見てくれよ」

　
「え？」

　
　
鶴丸は急に身体を離し、私の顔を真っ直ぐに見つめます。
　
　

「こんなに幸せな気分は久しぶりだ…。君には感謝してる。今まで散々審神者を殺してきた俺が言うのもなんだが、どうか仲間たちのことを助けて欲しい。君が俺たちの敵でないと言うのなら、俺は君のことを守りたいと思う」

「必ず力になってみせます」

「…よろしく頼むぜ、主？」
　

そう言った鶴丸は、これまでの中で、一番優しい笑顔を見せてくれたのでした。