長編小説【刀剣乱舞】白の審神者と黒の本丸～其ノ壱 (ページ3)

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天界にて② ページ3

【天界にて】

「……。審神者…？」

小角に呼ばれたAは、ポカンと口を開けて呟いた。

先程の客人は『時の政府関係者』だった。

そしてその用件はAに宛てたものらしい。

　
「つまり、その歴史修正主義者とやらに対抗するためAを貸してほしいということですか」
　

Aの隣で棗が静かに口を開いた。

「しかし審神者とは、現世の人間がなるものでしたよね？」

「そう言えば数十年前に一度、審神者の御仁にお会いしたことがあったな。名を何と言ったか…」

「【明里(あけさと)】さまですね」

「そうそう」
　

政府が望んだのは、Aを審神者として迎え入れることだった。

　
「審神者に必要なのは、物の心や想いを読み取る能力とそれを行使する力だそうだ。今回はそれ以上のものをAに期待しているらしいけど」

　
「…なんでしょう？」

「さてねぇ…。人間の手に余る重大な事態が起こったか…。Aの起用は政府が決めた特例だとも言ってたけど」

小角は思案げに言いつつ、愛用のキセルに火を灯す。

「歴史が改変されると、あるはずだったものが無くなり、ないはずだったものが生まれる。現世の存在を揺るがしかねない、か。そう考えると、ここにいる俺らにもなんらかの影響があるかもしれませんね先生」

「ふむ…Aに承諾してもらえるまで何度でも来ると言ってたから政府も相当必死みたいだしね」

歴史が変わるとはどういうことか。

Aはふと考え込んだ。

大切な主人も優しい兄弟子も、元はここにいる全員が現世の人間出身だ。

歴史の改変による影響がどんなものかは分からないが、二人に関わることなら当然見過ごすことはできない。
　

となれば、答えは一つだった。
　

「先生。そのお話お受けいたします」

Aは静かに立ち上がった。