続・ようこそ！！青蘭高校へ！！ 【 ３１ 】

間違っていた美学 ページ16

★☆★ 北斗・side ★☆★

今まで言ったことのない不満。



胸の内ではいろんなことを思ってるのに違いない…



きっと まだまだあるはず。



この不満は全部出した方がいい。



嗚咽が落ちついた頃、俺は問いかけた。



「他には？」


「… 」




…



「あるんだろ？」



この沈黙は まだまだあるな…



「これ… 」



？



「いらない… 」



え？




ガタッ…




「お前… これ… 」



生活費にと渡していた金…



「何で？え？… え？」


「毎月… やりくりしてる… 」



嘘だろ…



一銭も使ってないのか…



「お母さんたちと約束… 」



約束…



「贅沢しないでやりなさいって… 」



あ…



『 贅沢しないでやりなさい 』


『 松村家は家賃、河原家は生活費 』



そうだ…



反対されるどころか、拍子抜けするほど賛成の両家。



「食費や光熱費、ケータイ代だって範囲内でやってる」


「贅沢はできないけど、それでいいの」



…



「何回も… 言おうと思った… でも… 」


「北斗君… 全然… 私を見てくれない」



…



「涼君から 可愛い子だって聴いて… 」


「私といるより北斗君… 楽しそうだったから… 」



…



不満じゃない…



これは、不安だ。




「お金さえ渡してればいいだろって言う態度も嫌だった… 」



…



「でも… 一番嫌だったのは… 」



…




…




「手を繋げなくなったこと… だった… 」



！！！



「こんなに近くにいるのに… 」


「触れることさえ… できなくなって… 」



…



「淋しくて… 悲しくて… っく… っぅく… 」



「でも… 言えなくて… ひ… っく… 」




も…



う… いい…



「香月… 」



ぎゅぅ…




…




…





「好きなの… す… きぃ… 」


「一人にしないで… いやぁ… 」




ごめ…




「ごめん… ごめん、香月… 」


「ごめんな、香月… 」



こんなに淋しい思いをさせていたなんて…



廉耶のような生き方が男の美学だと思っていた。



彼のように守っているのだと思っていた。




でも…




「北斗くぅう… ん… 」




それは、違っていた。



どんなに金があっても…



どんなに一緒にいても…



相手を想いやれる ぬくもりや愛情がなければ何の意味のないこと。



俺は、廉耶を意識するあまり まったく香月の気持ちを考えていなかった。

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