続・ようこそ！！青蘭高校へ！！ 【 ２２ 】

心の葛藤 ページ27

皆が帰って１時間以上…


目の前に置かれた黒いカバン。


その中身は、ステンレスボトルに入れられたコンソメスープ。


お父さんがタンシチューと同じくらい気合いを入れる一品。


「… 美味しいんだよね、コレ… 」
透き通った黄金の液体。

「太輔… 大好きだよね… コレ… 」
飲むと幸せになれるって言ってたよね。


私も思う。


お父さんのコンソメスープは幸せの味だって。


「話し… 」
いまだに心が決まらない…

「行きたい… けど、行きたくない」
どんなに考えても答えがわからない。


太輔を追い込んだフランス行き。


「太輔… 知ってたけど… 『行っていい』と言ったわけじゃない」
それに…

「たとえ、『行ってもいい』って言っても… それは無理して言ってると思う」
私がいなくなったらって 考えた太輔…



『俺… 死のうとした』



ゾクッ…



「大丈夫なんて… 嘘」

「絶対に嘘だもん」



太輔は『信じて』と言ったけど…



「信じてる… でも、怖い」
安定剤…

「それが切れたら 太輔は… 」
手が震える…


失いたくない…


「だから… 行かない」
行かない方がいい。

「うん、これでいい。間違ってない」
間違ってない…


心に繰り返した。


「お父さんに習おう」
今までと同じように。

「私は、太輔の側にいる」
フランスには行かない。


太輔が大切だから。


「よし！行こう！」
カバンを持った。


よろける体でゆっくり歩いた。

幸い、どこかしこにも手すりがあった為、歩きやすかった。

廊下に出ると笑い声が聴こえた。


「あ… 松原医師だ」
ナースステーションに入ってくのが見えた。

「精神科のお医者様… 」
心の負担を取り除く医師。


裕にぃと同じ…


「私もならなきゃ… 」
心の負担を取り除く…


でも…

いざ、病室を前にしたら怖気着いてる自分に気づく。


心の中の葛藤…


「大丈夫。それに 太輔は、『側にいて』って言ってくれる」
行けとは言わない。

「言わないよね… 」
太輔…


ドアをノックする手が躊躇う…



ドキドキ…



ドキドキ…



「よし！！」


スーーーーッ…


え…


「おわっ！！？？」

「ひゃ！！」


目の前に現れた太輔に思わず声が出た。


「いたのかよ… 」
びっくりしつつも笑顔の太輔。


大好きな…


「A… ？」


笑顔…


… を、私は守りたい。


もう… 絶対に悲しませない。


心に決め、カバンを前に出した。

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