続・ようこそ！！青蘭高校へ！！ 【 ２１ 】

笑顔になれない ページ10

◆ 太輔・side ◆

いまだに Aは、笑ってくれない。


当たり前だ… 何一つ楽しいことはなく…


悲しいことの話ばかりだ。


許しの最低の条件だって… 俺にも当てはまることだ。


「俺もお前を笑顔にしないといけない」
Aを見つめた。

「笑顔… ひまわり… 」
そう… 俺が好きな笑顔…


シーン…


「ごめ… まだ… 私… … ごめ… ん」
あ…


涙が一筋 流れ落ちる…



シーン…



「笑えない… 笑えないよ… 」

「だって… だって… 」



A…



シーン…



「頭ではわかってるの… 笑わなきゃって… ひまわりの笑顔って… 」

「でも… どうやって笑っていいんだか… わかんない… 」


Aは両手で顔を隠して 屈んでしまった。


「ごめ… 太輔… 」

「ごめんなさい… 柚菜さん… 」


そうだよな…

心が追い付いていかないよな…


「いいんだ… ごめんな、俺こそ卑怯な言い方して」
首を振るA。

「笑顔はさ… 無理して笑うもんじゃない」
笑顔は…

「自然に出るものだもんな… うん、わかってる。わかってるよ」
俺は目を瞑った。


脳裏に浮かぶのは、君の笑顔。


「… 大丈夫。お前は 俺のこと信じてくれると言った」

「だから 大丈夫」


泣かないで…


「顔あげて… 俺を見て」
涙を拭こう…


シーン…


「大好きだよ… A」
おでこにキス。


瞼にもキス。

いろんなところにキスをした。

涙が止まるように…

笑顔になりますようにと おまじないを込めて。



数分後…



Aは 落ち着きを取り戻し 涙が止まった。


「柚菜さんも… 」
ん？

「… 探してくれたの？」
あ…


母さんの指輪を出した。


「… うん、そう… 皆と一緒に探した」
何日 探したっけ…

「なかなか見つからなくてさ… はは… 」
本当に大変だったな。


あの炎天下の中…

誰一人 文句も言わずに探してくれた。


「でも、誰も諦めなかった。だから 見つかったんだ」
ぎゅっと握った。

「兄さんから泥だらけの指輪を渡された時… 胸がいっぱいになった」
手に感じる想い…


『ほら… 手を出せ』


(シャラッ… )


『母さんだよ』



「皆の想いが指輪を… 母さんを探しだせたんだ」


握っていた手を広げた。


「手… 出して」


Aがゆっくり手を出した。



シャラッ…



コロン…



「綺麗だろ？秋元が綺麗にしてくれたんだよ」


Aは 指輪を見つめ…


顔をほころばせた。

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