続・ようこそ！！青蘭高校へ！！ 【 ２０ 】

与えた安らぎ ページ2

◇◆ 早瀬・side ◇◆

太輔の言葉で辻さんが救われた。

辻さんは、昨日と違う 別人のように穏やかな顔になった。

よほど 太輔の言葉が胸に響いたんだろう…


『俺は、許します』の言葉が。


重い十字架を降ろした。


「あ〜… お腹空いた」
ん？

「空腹だとさ、なんか気持ち悪い」
だろうな。

「鳥粥 楽しみ〜！！」
今日の太輔…


笑顔が溢れ ご機嫌…

寝てないせいかハイテンションぽかった。


「太輔、ちょっと診察… 」

「大丈夫」


え…


「目覚めたらちゃんと治療する。約束する」
約束…

「だから 俺を信じて。必ず見つけるから」
太輔…


強い瞳。

寝ていないと思えないくらい強い瞳が頷いた。


「わかった。お前を信じる」
太輔を信じよう…

「それよりさ… 」
ん？

「俺、上からだったね… 『許します』なんて… 父さんみたいに偉くないのに」
ああ…


確かにな…


「でもさ、俺があの言葉を言わないとダメだって思ったんだ」
うん…

「本当は… 許す、許さないとかじゃないんだけど… 俺が『許す』と言ったことで十字架の鎖が切れると思った」
重い重い十字架…


それを断ち切りたかったんだな。


「俺が産まれてきたこと… 悲しかったけど喜んでほしい」

「母さんの想いを誇りに思ってほしい」


太輔の辻さんへの想い…

それは、母さんを想うことと一緒。


「それをわかってほしくて… ついつい 言ってしまった」


太輔…


「全然 偉くないのに… 」

「あれで正解だよ」


俺は、一樹の横、助手席にいる辻さんを見つめた。


「あの笑顔が正解の証」
太輔も辻さんを見た。

「あの笑顔をお前が与えたんだ」
穏やかな笑顔。


与えた安らぎ。


「お前は、たくさんの人に愛されてる。そのこと… 二度と忘れてはいけない」
眩しい青空…

「母さんに愛されていることも」
空で俺たちを見てる。


側にいてくれる…


「母さんに恥ずかしくないように生きないとね！」
そうだな…

「でもさ、マジで母さんに見られてるんだよな… 」
凛斗の話だと。


『もう会えないけど… いつでも皆の側にいる… 』


「だよね、俺もすげー 驚いた、その話。でも… 本当なら変なことできないね、ね？兄さん？」


なぬ！？


「誰が変なことするか！それはお前だろ！いつでもピイピイ泣きやがって！」

「な！？誰がピイピイ泣いてんだよ！最近 泣いてなんかない！！」


くだらない言い合い…


でも、この日…


太輔は 大泣きになった。

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