一話 ページ1
今ではその年齢の記憶なんて曖昧なものしか残っていないけれど、寝ていたレオが私の指を掴んだその瞬間。そのことだけは今でも覚えている。
『レオ…！』
それから私は何があってもレオの傍を離れなかった。ただひたすらに可愛くて、ちっちゃくて、柔らかいその存在が私の全てになったんだ。
｢…？おーい？｣
テレビを見たままぼーっとしてしまっていたらしい。目の前には不思議そうな顔をして手を振る天使がいた。
『ごめんね、少し考え事してただけだよ。』
｢？まぁいいや！そんなことよりあれ何してるんだ？｣
テレビに小さくて可愛い指を向けながら、コテンと首を傾げる。その仕草可愛すぎる。天使かな？
テレビには五線譜に音符を書いている男の人が映っていた。
『あれは…作曲をしてるんだと思うよ。』
｢さっきょくってなんだ？｣
『えーっと、音楽を作ること、かな？』
そういえばいつもレオは何かしらの音楽を口ずさんでいる。音楽が好きなのかな？
｢おねーちゃん！俺あれやってみたい！｣
『えっ？でもリズムとか音の高さとかを自分で考えるんだよ？』
｢ん？難しいことはよくわかんないけど、音ならいつも頭の中でなってる！！それを書けばいいんじゃないのか？｣
その言葉に耳を疑った。この歳でそんなことができるのは少数だろう。習っていたならまだしも、レオは楽器すら触ったことがないのだ。もしかするとこの子には音楽の才能があるのかもしれない。
『そうだね、じゃあまずはお母さんにピアノを買ってもらえてるように頼んでみよう！』
｢ほんとか！おかーさーん！！｣
パッと花が咲くような笑顔を浮かべ、嬉しそうにお母さんの元へ走っていった。
その時私が感じていたことと言うと、
(天使？？可愛いすぎる……)
私はただのブラコンだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
