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捌 ─── ページ9

「な、なな何事だねっ!?」

「いいからじっとしててください!」

パタタタタと機関銃の音が聞こえた。

どちらも走行中の為に狙いは甘いようで、まだ被害はない。

……タイヤを撃ち抜かれたらゲームオーバーか。

「太宰様っ」

「もう少し先に開けた所がある!其処で奴らを車から引きずり出そう!」

怪訝な目を向けた私に、太宰様はにっこりと笑った。

「『ブラッディ・ローズ』は能力者の視野に入らないと使えないだろ?」

……この人っ……!

私は舌打ちをしてアクセルを強く踏み直した。

「私の精神のことも考えてくださいよ!」

「だって私、何もできないもん」

「だったら巻き込まれて死 ね……!」

「君と一緒なら問題無いね」

太宰様が嬉しそうに両手を打ち合わせたと同時にハンドルを大きくきると、車体が派手にスリップした。

追ってきた黒の車と向かい合う形で止まる。

「な、何が起きてるんだね……」

「議員はそのままで。防弾硝子ですから安心してお待ちください」

そう言い残して私だけ車の外に出る。

………ざっと二十人弱。

けっこうぎゅうぎゅう詰めで乗って来たんだろう。

その様子を想像すると笑えた。

青のフード付きマントを着込んだ追っ手は、両手を上げて出てきた私を見て銃を撃つのをやめた。

けれど、全ての銃口は油断なく私を向いている。

「一つ問います!貴方達は何者ですか!」

大声でそう呼び掛けると、指揮官らしき人物が前に出てきた。

「貴様らは武装探偵社か?」

「だったら?どうします?」

私の頬に冷や汗が流れ落ちる。

かろうじて余裕に見せるための笑みは保っているが、正直早く帰りたい。

「……我らは<机上の黒猫>。『青薔薇』を頂にもつ異能者集団」

少し片言な辺り、外国の異能組織か。

それにしても、聞いたことのない名前だ。

「太宰様、知ってます?」

「いいや。初耳だね」

幼い頃からマフィアに居た太宰様や私でも知らない組織。

……今やりあうには情報が少なすぎる。

「逃げようと思っているね?」

私の心の中を見透かしたように太宰様が言った。

「この人数と地形じゃ逃げられないよ。お荷物も抱えているしね」

議員のことすっかり忘れてた。

「……私に、あの人数をヤれ、と」

「選択肢は一つしかないよ」

さぁ、早く。

楽しむような口調で言われる。

どうせ他の道が無いのは自分でも分かっていた。

ただ、この異能を使いたくないだけで。

「──艶やかに咲き誇れ、『ブラッディ・ローズ』」

玖 ───→←漆 ───



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椿 - 頑張って下さい。 (7月14日 6時) (レス) @page21 id: 12b579857a (このIDを非表示/違反報告)
まかろん - 更新楽しみにしてます!頑張って下さい! (2021年4月17日 23時) (レス) id: 0d4f326c6a (このIDを非表示/違反報告)
*深音*(プロフ) - 更新待ってます! (2020年2月24日 10時) (レス) id: 3a5cebd5e2 (このIDを非表示/違反報告)
ロット - 抱きたい症候群とは、小説の名前ですか? (2018年5月19日 15時) (レス) id: a63c890358 (このIDを非表示/違反報告)
蓮華(プロフ) - 更新待ってます (2017年5月21日 19時) (レス) id: b4564d59b9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:久田 螺々亜 | 作成日時:2016年4月29日 12時

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