検索窓
今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:160,282 hit

参 ─── ページ4

「で」

処変わって私の部屋。

何故か私の目の前には長身の男。

そう、何故か婚約者の太宰様。

「何故貴方が私の部屋にいるんですか」

「いやだなぁ同棲だよ、同棲」

…………同棲って云うと、もっとロマンチックなものだと思っていたのに。

社長の采配じゃあ仕方ないけども。

『こ、婚約者…………なら、同じ部屋がいいよな…………そうだよな…………』

って社長まで困惑プラス混乱しないで欲しかった。

「というかA、いい加減敬語やめてほしいな。仮にも君の方が年上だし」

「年下だって自覚あるなら、君って言うのやめてもらえますか」

「癖だよねぇ」

…………くっそこの男どこまでもムカつく。

「ムカつくって聞こえてるから。聞こえてるよ」

「おっと、思いが強すぎて心から漏れ出ていたようです」

「…………昔から変わらないね、Aは」

「昔といってもそんなにないでしょう」

そうでもないよ、と太宰様は笑った。

そして窓から外を覗く。

「平和だねぇ」

決して強くはない風が、彼の蓬髪を揺らす。

…………絵にはなるんだよなぁ。

「今私のこと褒めた?ねぇ?褒めたでしょ」

「…………どうして、抜けてきたんですか」

私の唐突な質問に、彼は目を丸くした。

しかし、お互い目は逸らさない。

「…………2年前にね、ちょっと色々あったんだ」

一拍。

「友人が死んでね」

「…………そんなことで貴方が組織から足を洗うなんて」

「そんなことって酷いなぁ。唯一の友だったのだよ?…………その人に言われたんだ。『助ける側になれ』って」

珍しく太宰様の顔に影が落ちた。

冷徹な黒は見慣れたが、そうじゃない、悲嘆の黒。

「余程大事だったんですね」

「織田作だよ。君も知っているだろう」

「…………!」

知っているもなにも。

よく互いの仕事を助け合っていた仲間とも言える人間。

「君も織田作に似ていた。素晴らしい異能と頭脳を持ちながら、前線に立つのは拒否していた」

鼓動が早くなった。

私がいないところで知る人がいなくなった。

その事実は軽いトラウマともいえるもので。

「大丈夫」

ふわりと体が温かくなった。

それは、太宰様が私に抱きついてきたから。

予想外の成り行きに体が固まる。

「探偵社に来た。只奪うポートマフィアとは違う、温かい世界に来た。ならもう失うものは無いさ」

それに。

「私もいる」

…………悔しいけどその通りだ。

根拠が分からないまま、私は頷いた。

肆 ───→←弍 ───



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (273 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
548人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

椿 - 頑張って下さい。 (7月14日 6時) (レス) @page21 id: 12b579857a (このIDを非表示/違反報告)
まかろん - 更新楽しみにしてます!頑張って下さい! (2021年4月17日 23時) (レス) id: 0d4f326c6a (このIDを非表示/違反報告)
*深音*(プロフ) - 更新待ってます! (2020年2月24日 10時) (レス) id: 3a5cebd5e2 (このIDを非表示/違反報告)
ロット - 抱きたい症候群とは、小説の名前ですか? (2018年5月19日 15時) (レス) id: a63c890358 (このIDを非表示/違反報告)
蓮華(プロフ) - 更新待ってます (2017年5月21日 19時) (レス) id: b4564d59b9 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:久田 螺々亜 | 作成日時:2016年4月29日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。