両親 ページ25
此処なら人は来ないだろう、と太宰さんが選んだのは、以前太宰さんが使っていた執務室だった。
出ていった当時から入った者は居ないのか埃っぽい。
全体的にどこか重たい雰囲気をもつその部屋は、四年前の太宰さんを彷彿させた。
「さて、どこから話そうか」
回転椅子を揺らして太宰さんが問う。
私は手近なスツールを引き寄せると、腰を降ろした。
「……どこから聞けるんですか」
「初めから終わりまで」
答えはすぐに来た。
……本当になんでも知っているんだな、この人は。
私は数瞬迷い、しかし、思いきって問うた。
「両親は、ポートマフィアだったんですよね。何を……?」
「お母様はエリス嬢の世話を。異能も持たない普通の人だったよ。ただ『お手伝い募集!高給料!』の文字に釣られた一般人さ」
それだけ聞くとすごく残念なお人だ。
「父は?」
「旦那様のほうはただの構成員だった。紅葉姐さんの配下だったかな。でも……」
と、そこで太宰さんは躊躇った。
「話してください」
「……スパイだったのだよ。政府のね。異能特務課じゃなかったのがせめてもの救いだろうね」
「もしそうだったら……?」
「拷 問に次ぐ拷 問の末に虐 殺だろう」
さらりと言いのけられて体が強ばった。
ポートマフィアの拷問の厳しさはよく知っている。
一度中原さんに連れられて地下まで降りたが、10分と居ることは出来ず、直ぐ戻った記憶がある。
今はさほど気にしないで参加できるのだろうが。
「太宰さんは、その、なんで父と母を殺 しに……?」
全てを壊されたあの日、血 溜まりの中で無表情に立っていたのは、紛れもない太宰さんだった。
こうして普通に接するどころか、思慕の念さえ抱けるのは私としても少し不思議で。
……何故だろう。脳裏から消すことのできない人だ。
「そりゃあ森さんからの命令だよ。それ以外何もない。ただ、君を拾ったのは命令違反だけどね」
皆殺 しの筈だったから。
物憂げな顔でそう付け加えた太宰さんは、つと立ち上がった。
「まだ聞きたいことがあるって顔だけど、今日はここまでだ。あんまり此処に長居しちゃうと中也に悪い。森さんに見つかっても面倒だし」
「いえ、少し聞けただけでも嬉しいです」
私も立ち上がると、耳に忍ばせていたインカムの電源を入れた。
「いいよ。話は終わった」
「何を……!?」
太宰さんが驚愕の表情を浮かべた次の瞬間、部屋に大量の黒スーツがなだれ込んできた。
「すいません、太宰さん」
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ワンコンコン - 面白いダス (2019年7月21日 0時) (レス) id: ad92a05ced (このIDを非表示/違反報告)
きみぺ - すごく面白いです!!!更新頑張って下さい!!!めっちゃ応援してます(≧∇≦) (2016年8月8日 21時) (レス) id: f3497d4bfc (このIDを非表示/違反報告)
うちを - 太宰さん!太宰さんお願い致します!何とぞよろしくお願い申し上げますっ! (2016年6月12日 22時) (レス) id: 67f1d4205b (このIDを非表示/違反報告)
久田 螺々亜(プロフ) - 真衣さん» コメントありがとうございます。わ、わかりました……!ご期待を沿えるよう努力致します! (2016年6月1日 23時) (レス) id: a7a03e9879 (このIDを非表示/違反報告)
真衣(プロフ) - 中也オチを頼みます。 (2016年6月1日 20時) (レス) id: f1da17ec5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:久田 螺々亜 | 作成日時:2015年6月27日 21時