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気持ち ページ17

「ん、今、探偵社と戦争中なんですか?」

ずず、とお茶を啜りながら問う。

問いかける先はゴーグルに白衣の青年。

先輩にあたる梶井 基次郎さんだ。

「戦争、というかあれだな。ただ依頼を遂行中というか…………」

「だが、いまいちわかんねぇな。外国からの依頼だろ?首領はなんでンなもん受けたんだ」

「どうせ報酬でしょう」

呆れたように言い放つ。

闇社会において一番大事なのは利益だと、最近は理解が進んだ。

「それはそうなんだが…………額が半端じゃないらしくて…………」

「…………幾らなンだよ」

「……………………七十億」

たっぷりと時間をかけて出された答えに、私も中原さんもひっくり返った。

「な、七十億ぅ!?」

「虎一匹でか!?」

梶井さんは肩をすくめると、ため息をついた。

「組織中血眼だよ。挙げ句の果てに芥川は太宰を捕まえてくるし」

「太宰ぃ!?それ何時の話だよ!?」

「今日」

「今日!?」

中原さんは若干引いてる梶井さんに目もくれず、何事かぶつぶつと呟くと慌てて部屋を出ていった。

…………太宰さん、か。

戻ってきたその日に再会の場が用意されてるとは。

嬉しがっていいのか、怒っていいのか。

…………太宰さんのことになると、自分のこともわかんなくなるなぁ。

「A。中原の後を追わなくていいのか?」

「…………いや、太宰さんのことだから、中原さん向けに何か用意してるでしょうし」

「まるで誕生日のプレゼントみたいに言うな」

前なら笑って冗談にでもしたが、今回はできなかった。

自然と俯いてしまう。

「梶井さん」

「…………聞くよ」

「誰にも話してなかったんですけど、太宰さん、失踪する前に私の部屋に来てたんです。そこで「申し訳ない」とか言ってて…………。実際裏切ったことになるんで、それで謝罪は受けたことにしようって」

「うん」

「でも、なんか裏切り以前に腹立たしいんです…………!残された者がどんな思いだったか…………!」

…………どんな喪失感だったか。

「Aの気持ちもわかるよ。っていうかたぶん皆そうだから」

でもね。

と、梶井さんは珍しく優しい声音で私に言った。

「彼の気持ちも、想像してみてよ」

にこりと笑ってそれだけの言葉を残すと、梶井さんは部屋から出ていった。

出ていった人の気持ち、かぁ。

「…………私も出ていけばいいのかな」

出ていったところで行く当てはないのだが。

その時、ドアが開いた。

「本多様。首領がお呼びです」

任務→←銀姫



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ワンコンコン - 面白いダス (2019年7月21日 0時) (レス) id: ad92a05ced (このIDを非表示/違反報告)
きみぺ - すごく面白いです!!!更新頑張って下さい!!!めっちゃ応援してます(≧∇≦) (2016年8月8日 21時) (レス) id: f3497d4bfc (このIDを非表示/違反報告)
うちを - 太宰さん!太宰さんお願い致します!何とぞよろしくお願い申し上げますっ! (2016年6月12日 22時) (レス) id: 67f1d4205b (このIDを非表示/違反報告)
久田 螺々亜(プロフ) - 真衣さん» コメントありがとうございます。わ、わかりました……!ご期待を沿えるよう努力致します! (2016年6月1日 23時) (レス) id: a7a03e9879 (このIDを非表示/違反報告)
真衣(プロフ) - 中也オチを頼みます。 (2016年6月1日 20時) (レス) id: f1da17ec5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:久田 螺々亜 | 作成日時:2015年6月27日 21時

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