第一章 第二十三話 ページ25
「ほ、本当ですか？一か月ここにいてくれるんですね！？」
先程までしっとりと諭すように話をしていたフーゴは、今にも飛び上がってしまうのではないかと思うくらいに目を輝かせ、声を弾ませている。
「うん、ここにいる」
如何にも感激したような溜息が聞こえる。
それ程感情を前面に出さない彼が、抑えきれないといった風に口角を上げていることに、自分も嬉しさを感じる。まるで自分の存在価値を、彼が証明してくれているかのように思ってしまい、無抵抗に心が満たされていく。
「じゃあできるだけ早く手続きと準備を済ませますから」
胸がいっぱいでうまく声が出せず小さく数回頷くと、フーゴは一息置いて落ち着いた様子で微笑を浮かべながら向き合った。
「待っていてください」
再び潮風が柔らかに髪を煽り、なんとも耽美な光景を創り出す。
胸の奥で燃え上がる火にどうしようもなく身を焦がしているのを感じながら、この状況に温く浸ってしまう。
今となっては、これから過ごす時間に一つも後ろめたいことはない。
彼がいれば、どこでもやっていけるような気がしているのだ。
ふと自分に意識を向けると、水蒸気が上がっているのではないかと危惧してしまうほど、自身の体温が上昇しているのをありありと感じる。
それと対照的に、耳から入ってくる、波が白い浜に打ち付ける音がとても涼しげで、火照った体が無意識に海のほうへ向かおうとしている。
「ねえ、海のそばに行ってきてもいい？」
「いいですよ。僕も行きますか？」
「ううん、大丈夫」
この温度を悟られまいと少し小走りに波のほうへ向かう。水に触れた指先から熱が水中へと溶けていく。
その心地よさに、生き物のように体を浜辺に寄せる波を暫く撫でていた。
やがて身体中の熱が海中へと溶け込んでいき、頭も大分冷えた頃、単調な反復運動を繰り返す水を見てどうしようもなく心が締め付けられた。己の膝を抱え込んで思い切り抱きしめると、少しばかりか心が軽くなったような気がする。
今は後ろを振り向けない、と、理由は分からないがなんとなく本能でそう感じた。
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淡深雪 肴(プロフ) - fenonさん» コメントありがとうございます。当方多忙の為更新頻度は落ちますが、定期的に皆様にフーゴをお届けできるよう善処いたしますのでこれからも是非ご愛顧下さいませ！ (2020年8月14日 10時) (
レス) id: 0d31e9065f (このIDを非表示/違反報告)
fenon(プロフ) - 本当に私得で大好きです。お気に入りさせていただきました！ (2020年8月14日 9時) (レス) id: 8dce9856e7 (このIDを非表示/違反報告)
淡深雪 肴(プロフ) - 伯さん» 伯様素敵なご感想ありがとうございます。作者がこだわっている点に気づいていただけて喜ばしく思います!! 至らぬ作者でございますが、今後とも本作品をご愛読ください! (2020年5月28日 10時) (レス) id: 0d31e9065f (このIDを非表示/違反報告)
伯(プロフ) - いつも楽しく読んでいます。出会いたての頃は大人びて見えたフーゴくんが、夢主と親しくなるにつれヤキモチやいたり慌てたり照れたりと年相応の一面を見せるようになるのがとても可愛くて好きです。素敵なフーゴくんをありがとうございます、今後も楽しみにしています！ (2020年5月28日 0時) (レス) id: bb5d92349b (このIDを非表示/違反報告)
淡深雪 肴(プロフ) - りんさん» りん様激励のお言葉ありがとうございます。作者のモチベーション維持にも関わりますので本当に嬉しいです…!! より一層精進して参りますのでこれからも是非ご愛読ください! (2020年5月27日 21時) (レス) id: 0d31e9065f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：淡深雪 肴 | 作成日時：2020年5月3日 19時
