☆ ページ19
ym side
「やーまちゃん、帰ろー」
慧ちゃんが仕事終わりに声を掛けてくれた。仕事の合間に慧ちゃんがくれたメッセージに返事してないで、1日ずっと、テンション低かった俺。
時々、やって来る、ほっといて欲しい時間。
みんなに気を遣わせてるって分かってるけど、そんな俺を許してくれるのも分かってるから、メンバーにはついつい、やっちゃうんだよな。
「涼介？」
みんながいる所では「山ちゃん」って言うけど、ふたりきりの時は「涼介」って呼ぶ慧ちゃんが、耳元で俺の名前を呼んだ。
顔をのぞきこんで、俺の手をにぎる。
伊「帰ろうよ」
山「うん」
いつも子どもみたいな慧ちゃんなのに、時々、お兄ちゃんな顔する事がある。
今だって、お兄ちゃんみたいな顔して、にこにこしてる。
ふたりで一緒に楽屋を出る。
予定してないお泊まりだから、タクシーで帰らないと。
慧ちゃんは外食が好きじゃないから、スーパーに寄って。
何を作ろうか。
さっきまで、深い所にあった意識が浮上していく感覚。
伊「夜ご飯は、からあげが良い、デザートは苺のケーキね」
山「うん」
からあげにケーキ。
やっぱり、スーパーに寄らないと。ケーキは、せっかくなら美味しいお店のが良いから、そこにも寄らないと。
慧ちゃんの下着にパジャマを出してあげて。
もう、考える事がいっぱいだ。
伊「からあげ、涼介がひとつ多く食べて良いよ。俺の苺のケーキの苺、あげるからね」
山「・・・」
伊「そんで、一緒にお風呂に入って一緒に寝よう」
山「・・・慧」
にこにこ笑って横顔は、やっぱりお兄ちゃんな顔してる。
慧ちゃんは、俺なんかより、すっごく大人だ。
伊「なあに？」
山「からあげの材料もケーキも買うのは俺だし、からあげを作るのも俺だけどね」
伊「ぐっ・・・小さい事は気にしないの！」
ほっぺをふくらませて、ぷいって横を向いた慧ちゃん。
その横顔は、子どもみたいな顔。
お兄ちゃんな慧ちゃんも子どもみたいな慧ちゃんも、どっちも大好きだよ。
ありがとう。慧ちゃん。
慧ちゃんの耳元でささやく。
山「えっちしようね」
伊「ぐっえっ！アイドルがそんな事、口に出しませんよ！」
山「ふははははっ」
真っ赤な顔になった慧ちゃんが、ずんずん歩いて行く。
からあげ、いっぱい作ろうっと。
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作者名：昨日 | 作成日時：2024年1月20日 9時
