俺じゃあかん？ (ページ10)

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「どっちおみくじにすんの？」

目の前には " 初みくじ " と " 恋みくじ " の文字。

「ん～、恋もいいけど、やっぱ初みくじかな？望は？やっぱ恋？」
「なんでやねん、俺は断トツ初みくじやわ」
「へー、彼女出来ないから恋の方にしとけばいいのに」

なんて言う彼女。
出来ないのでなく、作らないのだと言ってやりたい。

結局、2人とも初みくじを引いた。

「「せーの！」」

そう言っておみくじを開く。

「うわ！！俺大吉やん！」
「えー、私吉だし」
「いぇーい！勝った！」

紙には赤で大きく書かれた " 大吉 " の言葉。
ふと隣を見ると書かれている事を真剣に読む彼女。

「なんて書いてあった？」
「時期が大切です。改めてその道を進みなさいやって」
「へー、まあ、いい意味ちゃう？」
「待って、恋愛、よく見定めて進めやって！」
「なんやそれ。常日頃からやん、Aの場合」
「ちょっと！」

俺はなんて書いてあるんやろう？と思い紙を見る。

「望は？」
「盛んな運勢ですから、自分の仕事に一心に励めばする事なす事心配なく万事幸の芽となりますやって」
「ふーん、恋愛は？」
「あわてず、心をつかめやってさ」
「ふーん、頑張れ」
「なんか興味なさそうやな」

おみくじを畳んで財布に仕舞おうとして最後に目を通した時、ふと目に付いた。

" 但し周りに気を使うばかり大切な物を失う事あり "

なんやそれ。なんて思いながらしまった。

「どうする？帰る？それとも..... 「「甘酒」？」

ピッタリと重なる声。

「やんな」

思わず笑ってしまった。

「だって、これ飲まな初詣ちゃうくない？」
「確かに」

謎に甘酒が好きな彼女。
4年前から飲むようになり、それが定番となった。

「すみません、甘酒2つ」
「はーい」

テントの下でジャンパーを着たおっちゃんが甘酒をカップに入れてくれる。

「はいよ、生姜いれるんったらそこで入れてな」

そう言われる前に既に大量の生姜を入れる彼女。

「お前入れ過ぎちゃう？」
「これくらいが丁度ええの、私は」

なんて言いながらひと口飲む。

「ん～、美味しい！」

白い息を吐きながら甘酒を飲む俺ら。

「望はさっき、何願い事したん？」
「何急に」
「ん？気になったから？」
「なんやそれ。てか、言う必要ある？」
「ある」
「ないわ！」

ていうか、言えるわけない。

"Aが幸せでありますように"なんてお願いしたって。

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