俺じゃあかん？ (ページ8)

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見事に綺麗に平らげた蕎麦と寿司。
彼女はソファーに寝そべってテレビ見ては笑って、俺は食器を洗う。

「なぁ、A」
「んー？」
「明日何時くらいに帰る？実家」
「昼くらい？」
「了解、母さんに連絡しとくわ」

洗い物を終えて、ソファーの下に座り母さんにメッセージを送った。

「ねぇ、望」
「ん？」
「何時に出る？」

彼女はこっちを見ずにそう尋ねてくる。

「やっぱ年越しには着いときたいから、30分に出るか」

なんて俺が返す。

「やっぱ寒いんかな？」
「そら寒いやろ」
「人多いんかな？」
「そらな」

そして再びテレビに目を向ける。

「昨日、朝まで飲んどったん」

ふと思い浮かんで尋ねる。

「ん、急遽忘年会的な感じやったからな」
「バイト先？」
「ん、そう」

彼女は韓国料理屋でバイトをしている。

「あ！そうや！」

そんな時、急にでっかい声を出す彼女。

「神ちゃんのとこ行かん？」
「神ちゃん？」
「ん、今日大晦日やからまだやってるくない？」
「確かに、行くか」
「あ、待って。軽く化粧だけさせて」

彼女は慌てて寝室に行きバタバタと服を着替えてメイクをして出てきた。

「望、行こ～」
「ん」

コートを羽織り、テレビと電気を消して寒い街中に出る。
予想してたよりは寒くなかったけど、流石大晦日。
足の指先が痛かった。

「やっぱ寒い～」
「そりゃそうやろ」

彼女は羽織っていたコートのポケットに手を突っ込んで縮こまりながら歩いていた。

しばらく歩くと目的地に着き、彼女は寒さから逃げるようにドアを開けた。

「いらっしゃいませ....って、A！あ、のんちゃんも」
「神ちゃん、寒い！！」
「はいはい、そこ座っとき」

そう言う神ちゃん事神山智洋お兄ちゃん。
地元が一緒で近所のお兄ちゃん。
よく面倒見てもらってて、今も仲がいい。

「ほい、ココアね」
「「ありがと～」」

テーブルの上にはカップから湯気が出るココア。
一口飲むと上品な甘さが口いっぱいに広がる。

「今年も2人で初詣？」
「うん、そう」
「その前にAが神ちゃんとこ行きたい～って」
「あはは、可愛いな」

昔から変わらない優しさ。
金髪でめっちゃピアス空いてるけど、ほんまに優しい。

「あ、そうや」

何かを思い出し、一瞬裏に行く神ちゃん。
そして手に何かを持って帰ってきた。

「これ、カイロ持って行き」

ほら、優しい。

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