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この時間が、名残惜しい。
きっと屯所に帰ると少しだけ＿＿＿＿ほんの少しだけ、寂しい時間を過ごすのだろう。
カラリ、と氷が軽快な音を立てる。
桂の残りの酒がただの芹沢Aでいられるタイムリミットみたいで、恨めしかった。
どうか、もう少しだけこのままで。
そんな願いも虚しく桂が最後の一杯を飲み干し、私達は徐ろに席を立って勘定した。
夜に取り残された明るく賑やかな店を後にして、真っ暗な夜道を歩く。
並んで歩く私達の間には、決して心地悪くはない沈黙が流れる。
「A」
桂は短く名を呼んだ。
顔は前を向いたままだった。私は立ち止まった。
ゆっくりと桂が顔をこちらに向ける。
その瞳は街の数少ない街灯を宿して、艶やかに光る。
嫌な予感がした。
わたしと桂の間の壁がぶち壊されるような＿＿＿＿そんな予感が。
「ただのAに、ただの桂小太郎として伝えたいことがある。久々に会って、漸く俺も決心がついた。」
「A、俺は攘夷志士だ。仲間の死を沢山見てきた。それでも俺は戦い続けるだろう。この国を変えるためなら命も厭わんさ。だが、それでも未練は尽きないんだ。A、俺の未練はお前だ。自己犠牲の癖が治らないお前が足掻く理由も、この世の未練も俺がいい。」
やめて。
その先を、言わないで。
時が、止まった。
私の願いも虚しく、桂は無慈悲に告げた。
「幼なじみだからどうという話ではない。ずっとお前が好きだった。一人の女として。今まではそれを伝える勇気が無かっただけだ。」
「何で」
「何でそんなこと、言うの。」
我ながら子供みたいだ、と思った。
私の吐いたせめてもの小さな抵抗は、きちんと桂に届いたらしい。
困ったように笑って短く「すまない」と謝罪したあと、「だが後悔はしていない」と言った。
「勝手だよ。お前も、高杉も。」
自嘲気味に力なく笑う。
お前らの好意なんて要らないんだ。私は昔みたいに笑ってたいだけなんだ。
支離滅裂に言った、最低でどうしようもない私の八つ当たりを、桂は只々困ったように笑って聞いていた。
言い返すことなく、受け止めていた。
「何で……こんなになっちゃったの…」
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通行人N(プロフ) - 謬見さん» コメントありがとうございます(_ _;)毎週土曜日更新の予定です。Twitterで更新したらお知らせしていますので、ぜひそちらも✨これからも頑張りますのでまた感想をお聞かせ下さいね！ (2022年11月20日 16時) (
レス) @page17 id: 39adec4ff4 (このIDを非表示/違反報告)
謬見(プロフ) - 面白くて一気読みしちゃいました(*´꒳`*)更新待ってます！！ (2022年11月19日 21時) (レス) id: 9ecb800a6a (このIDを非表示/違反報告)
通行人N(プロフ) - 鬼魂さん» コメントありがとうございます(_ _;)そう言っていただけてとても嬉しいです✨これからも更新頑張りますので宜しくお願いします。 (2022年11月14日 15時) (レス) id: 39adec4ff4 (このIDを非表示/違反報告)
鬼魂 - とても面白いです！更新頑張って下さいｯ!楽しみに待ってます！！ (2022年11月13日 16時) (レス) id: ce3cc772d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：通行人N | 作成日時：2022年10月1日 10時
