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神威はなんだか面白くなくて、つい思ってもない軽口を叩いてしまう。
「こういうの、地球では『馬子にも衣装』って言うんだっけ？」
「何でも似合う美人からしたら私はさぞ滑稽でしょうねぇ……一生ダサい服着てろ」
結局はいつものような軽口の叩き合いになってしまうのである。前にもこんなことあったような。
それでも神威は罪悪感から、こんな提案をする。
「その服、俺が買うよ」
Aの気分に水を差してしまったお詫びである。そして彼女の返答はこうだった。
「え？ 神威って女装趣味あったの？ ……ワンチャン私より似合うか？」
「違う、そうじゃない」
神威が自分で着るために買うのではない。Aに贈るために買うのだ。
この噛み合わない感じ──そうだ、Aはこういう人だった。そう一人で納得する。
「お買い上げありがとうございました」
神威が会計をして店を出る。
Aは新しい服を見せびらかすようにくるくる回りながら軽やかな足取りで歩き出した。なんだかんだ言って、お洒落な格好をしたい年頃の少女である。
そんなAを、神威は眩しそうに眺めていた。
ちなみに、彼女の買い物はこれで終わるなんてことはない。
洋服は種類が多いのだ。カジュアル、地雷系、ガーリー、綺麗め、スポーティ、森ガール、セクシー系、ゴスロリ、エトセトラ、洋服の種類は挙げたらキリがない。
あっちへふらふら、こっちへふらふら。全てが気になってどれも見に行く。
もう欲しい物を我慢する貧乏な少女はいない。だから欲しいと思ったら躊躇なく買う。一着目は神威のおかげで資金が浮いたわけだし。
ちなみに、セクシー系は男二人に止められた。
そんなこんなで、Aの買い物に付き合わされ荷物持ちもしている神威と阿伏兎の体力ゲージは残りわずか。
そこへ、あるものがAの目に止まった。
「あっ、よくある変なTシャツの店だ。最後にここ見てこ」
シュールな言葉がプリントされているTシャツ屋を見つけた。軒下に掛けられた無数の謎Tシャツが目立っている。
「おぉー、色んなのあるね。�猜兮岫瓩豊狷�いたら負け�瓩修譴�ら�猝斉�から本気出す�瓩海ΔいΔ慮�るの楽しいよね」
「こんなのいつ着んだよ……」
阿伏兎が冷静なコメントを述べる。こういうのはノリとテンションで衝動的に買うものだから、そんな冷静さはここでは野暮である。
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作者名：夢宵桜 | 作者ホームページ：https://lit.link/dreamfairy
作成日時：2024年3月25日 21時
